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荒川区には江戸から続く工芸技術を受け継ぎ、伝えている職人が多く活躍しています。
その伝統工芸技術を後世に継承するため、荒川区は弟子を募集する職人と弟子入りを希望する若者をサポートするための取り組みを行ってきました。
荒川区伝統工芸技術継承者育成支援事業(荒川の匠育成事業)を始めて10年、荒川区で育った若手職人と研修者の「今」を紹介します。
また、若手職人と研修者を追った「次世代の匠」が荒川ケーブルテレビで放映中です。区ホームページ、YouTubeでも配信していますので、ぜひご覧ください。11月現在、第3弾まで配信中!
事業に応募し審査に通った方を、次の3ステップでサポートしています。
募集については、本ホームページでお知らせします。
伝統工芸技術の職人さんのもとで、職人見習いとして短期の現場実習を行います。
その間、荒川区から研修手当てが支払われます。
ステップ1を終了し、引き続き希望する方は、審査の後にステップ2へ進むことができます。
原則として、ステップ1を終了した方が対象です。
伝統工芸技術を持つ職人さんのもとに弟子入りをして、本格的に修業を行います。
その間、荒川区から研修手当て等が支払われます。
修了者は、若手職人として、荒川区のPR事業に参加することができます。
令和2年4月現在、匠育成事業で支援を受けて修業中の方の一部を紹介します。
木版画は絵師、彫師、摺師による分業で作られ、木版画彫は絵師の描いた絵をもとに、色に分けて板を彫りあげる技。
阿部氏はデザイン専門学校でものづくりについて学ぶなかで木工に興味を持ち、関岡裕介氏(三代目関岡扇令、区登録無形文化財保持者)のもとで修業を始めた。指導者の関岡氏は、四代目大倉半兵衛氏について技を修得した。
研修5年目の現在は、これまでに身につけた技を使い、色板彫りや、版木の余白部分のさらい(削り取り)など、親方の作業の手伝いをするなかで、経験を積んでいる。
作業する阿部さん
体験用版画 不知火諾右エ門横綱土俵入の圖
体験用版画 不知火諾右エ門横綱土俵入の圖(部分)
額縁は、桜材を主材料として、作品に合わせて製作される。
その技は指物の系譜を引く伝統的な木工技術のひとつで、工房内で職人たちが分業してつくりあげる。渡邊氏は美術大学で絵画を学ぶなか、額縁製作に興味を持つようになった。吉田一司氏の工房へ弟子入りし、先輩職人から指導を受けて修業を積んでいる。指導者の一司氏は分業の「纏め」を担い、吉田吉治氏(元区指定無形文化財保持者)から続く富士製額の二代目である。
現在研修4年目で、額縁製作のうち木地製作の修練を重ねている。普段の生活の中でも取り入れられる作品を作れないか、様々な作品作りに挑戦している。
作業する渡邊さん
シンプル素地額縁
シンプル素地額縁(部分)
七宝は、デザイン(原案)の考案、盛り込み、研磨、焼成、仕上げのなどを分業するが、畠山家は一貫した技を伝える。
佳奈氏は大学卒業後に就職をしたが、家業が守ってきた技を絶やさず受け継ぎたいと思い、父・畠山弘氏(区登録無形文化財保持者)について修業している。指導者である弘氏は、畠山吉雄氏から続く畠山七宝の二代目である。
現在は研修3年目で、これまで釉薬(ガラス質の上薬)を地金に盛り込む基礎作業の技術指導を受けてきた。技を磨きながら、新たな色合いやデザインを考案するなど、作品作りに意欲的に励んでいる。
作業する畠山さん
petit gateau(プチガトー)
petit gateau(プチガトー)(部分)
のれん染は、型を彫り、染め上げる技。分業が多い中、片山家は一貫して製品を作る技を伝えている。
琢満氏は、数年前から家業を手伝う中で、染物の魅力や店舗ののれんの重要性を実感するようになり、その後、本格的に父・片山昭氏について修業を始めた。指導者の昭氏は春雄氏(元区登録無形文化財保持者)、一雄氏(元区指定無形文化財保持者)から続く片山のれん染工所の三代目。
研修3年目となる現在は、片山家の技を受け継ごうと、日々修業を重ねており、藍染めや柿渋染めなど、様々な染色技術の修得にも努めている。
作業する片山さん
風呂敷
風呂敷(部分)
匠育成事業を修了した若手職人の一部をご紹介します。
三味線は、棹作り、胴づくり、皮張りの技術の分業制をとる。
倉橋氏は、以前から加藤金治氏(区登録無形文化財保持者)の工房で仕事の手伝いをしていたが、その後、本格的に修業を積んだ。指導者の加藤氏は、台東区根岸の藤田清氏に師事して技術を修得した皮張りの職人で、三味線専門店である「三味線かとう」を営む。父・与作氏は棹作りの職人であった。
研修を修了した現在も、親方の工房にて木栓を使って皮を手張りする作業に取り組み、三味線の製作や修繕に励んでいる。
作業する倉橋さん
紅木三味線 両面犬皮張り
紅木三味線 両面犬皮張り(部分)
鍛金とは金属の板を熱し、木槌・金槌で叩き、延ばし、絞って器などを成型する技。
守屋氏は高校時代に鍛金、専門学校では工業デザインを学んだ。その技術を活かしてものづくりに携わりたいと思い、長澤利久氏(区登録無形文化財保持者)のもとで修業を積んだ。指導者の利久氏は、金次郎氏(元区指定無形文化財保持者)、武久氏(区登録無形文化財保持者)から続く長澤製作所の三代目である。
研修を修了した後、2年間、業務委託として同社で銅製和食器の製作販売に携わりながら、個人でも銅製品の製作販売を行った。その後、有限会社東浦銀器製作所にて二代目石黒光南に師事し、現在も同社で金銀和食器や仏具の製造を担っている。
木瓜紋香炉
木瓜紋香炉(部分)
鋳金は、金属を溶解させ、それを鋳型に流し込み、目的の形に固めて仕上げ処理を行う技。
育祥氏は大学でグラフィックデザインを学んだが、「形」のあるものを作りたいと思い、父・松本隆一氏(区登録無形文化財保持者)のもとで修業を積んだ。指導者の隆一氏は、明治時代以来、日暮里で開業している堀川鋳金所の堀川次男氏(元区指定無形文化財保持者)に師事して技を修得し、同工房を継いだ。
研修を修了した現在も、父と工房で技を磨き、花器や茶器等を手がけ、親子二代の作品展にも挑戦している。荒川区伝統工芸技術保存会会員、日本工芸会会員。
作業をする松本さん
紫銅花器「焚花」
紫銅花器「焚花」(部分)
木版画は絵師、彫師、摺師による分業で作られ、木版画彫は絵師の描いた絵をもとに、色に分けて板を彫りあげる技。
永井氏は、京都の伝統工芸の専門学校で仏像彫刻を学ぶなかで木を彫ることを仕事にしたいと思い、関岡裕介氏(三代目関岡扇令、区登録無形文化財保持者)のもとで修業を積んだ。指導者の関岡氏は、四代目大倉半兵衛氏について技を修得した。
研修を修了した現在は、新作の浮世絵版画などの依頼を受け、自宅で製作に励んでいる。荒川区伝統工芸技術記録映像『伝統に生きる―木版画摺 川嶋秀勝―』で使用した版木の彫りも手掛けた。
作業する永井さん
ウルトラマン短冊
ウルトラマン短冊(部分)
提灯文字は提灯に文字や模様を描く技。文字の基本は江戸文字で、他にも家紋や絵など様々なかきものを施す。
健一郎氏は、子どもの頃から提灯作りの色塗りなど、家業の手伝いをしていた。村田家が受け継いできた技を継承したいと、父・村田修一氏(瑞悦、瑞龍、区登録無形文化財保持者)に師事し修業を積んだ。指導者の修一氏は、芳造氏、欣一氏(元区登録無形文化財保持者)と、大正時代から続く泪橋大島屋の三代目。村田家は初午で飾られる地口行灯の絵も描いている。
研修期間を修了した現在も、父とともに仕事に励んでいる。荒川区伝統工芸技術保存会会員。
作業する村田さん
御用型弓張提灯
御用型弓張提灯(部分)
寄席文字は、伝統的なデザイン文字を書く技。
銘苅氏は足を運んだ寄席文字教室で中村泰士氏(荒井三鯉、橘右橘、区登録無形文化財保持者)に出会い、その後修業を積んだ。指導者の中村氏は、寄席文字は橘流寄席文字家元・橘右近(椙田兼吉)に、勘亭流は二代目荒井三禮(上野庄吉、元区指定無形文化財保持者)に師事し、千社札の文字も手掛け三書体を書き分ける。
銘苅氏は研修が修了となる年に橘流寄席文字一門として「橘さつき」の名を許され、現在はめくりやビラの作成をはじめ、寄席文字に関する仕事の幅を広げている。勘亭流の技術向上にも努め、師匠の中村氏のように三書体をこなす江戸文字書家を目指している。
作業する銘苅さん
額「五代目柳家小さん名演集」
額「五代目柳家小さん名演集」(部分)
額縁は、桜材を主材料として、作品に合わせて製作される。その技は指物の系譜を引く伝統的な木工技術のひとつで、工房内で職人たちが分業してつくりあげる。
栗原氏は、大学時代の趣味だった近代絵画の鑑賞が高じて額縁に興味を持つようになり、吉田一司氏の工房へ弟子入りし、先輩職人から指導を受けて修業を積んだ。指導者の一司氏は分業の纏めを担う、吉田吉治氏(元区指定無形文化財保持者)から続く富士製額の二代目である。
研修を修了後も親方の工房にて、下地塗りや箔押しなどの仕上げの工程を担当し、日々研鑽を積んでいる。
作業する栗原さん
奥:ショクガク(額縁トレー)手前:ナガク(名刺入れ)
ショクガク(額縁トレー)(部分)
研修期間 平成25年4月から平成31年3月
指導者 渡辺光(荒川区登録無形文化財保持者)
技術 指物
指物とは、釘を使わずにホゾを組み合わせて、家具や箱を作る技。渡辺家は、硬く加工の難しい桑材を扱う技を持つ。
久瑠美氏は大学で服飾について学ぶなかで、技の後継者の重要性も知り、家業の技を伝承したいと思い、父・渡辺光氏(区登録無形文化財保持者)について修業した。指導者の光氏は、渡辺禀三氏(元区指定無形文化財保持者)から続く渡辺和家具製造の二代目である。
研修を修了した現在も、指物職人として父とともに工房で働く。これまでに修得した技術を活かし、箱物や姫鏡台、細かい調整が必要な小引出など、高度な技を要する作品にも取り組んでいる。
作業する渡辺さん
屑箱
屑箱(部分)
研修期間 平成27年4月から令和2年3月
指導者 川嶋秀勝(荒川区指定無形文化財保持者)
技術 木版画摺
木版画は絵師、彫師、摺師による分業で作られ、木版画摺は彫師の彫った板をもとに、紙に絵を摺り上げる技。
小川氏は大学卒業後に就職したが、木版画摺師であった祖父・関岡功夫(二代目関岡扇令、元区指定無形文化財保持者)の技術を受け継ぎたいと思い、祖父の弟子である川嶋秀勝氏(区指定無形文化財保持者)のもとで修業を積んだ。叔父に関岡祐介氏(三代目関岡扇令、区登録無形文化財保持者)を持つ。
研修を修了した現在も、親方の川嶋氏とともに千社札や浮世絵などの作品を手掛けている。親方同様に創作版画の作成にも意欲的である。
作業する小川さん
富嶽三十六景神奈川沖浪浦
富嶽三十六景神奈川沖浪浦(部分)
研修期間 平成28年1月から令和2年3月
指導者 畠山弘(荒川区登録無形文化財保持者)
技術 七宝
七宝は、デザイン(原案)の考案、盛り込み、研磨、焼成、仕上げのなどを分業するが、畠山家は一貫した技を伝える。
石井氏は、専門学校でジュエリーデザインを学ぶなかで七宝に興味を持ち、畠山弘氏(区登録無形文化財保持者)のもとで、作品のデザインを担当していた。その後、弟子入りし、技術の修業を積んだ。指導者である弘氏は、畠山吉雄氏から続く畠山七宝の二代目である。
研修を修了した現在も、親方の工房で他の工程にも取り組みながら、新規の作品のデザインや色合いを考えるなど、作品作りに精を出している。
作業する石井さん
ふく猫つむぎ
ふく猫つむぎ(部分)
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