荒川区中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例について
中高層建築物の建築に伴い、日照阻害、テレビ電波受信障害、工事による騒音・振動などで近隣住民の方と建築主との間に紛争が多く発生しています。
荒川区では、これらの紛争の予防と調整をはかるため、「荒川区中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例」及び「同施行規則」を制定し、建築紛争を未然に防ぐように努力しております。
- 主な条例の用語
- 中高層建築物
高さが10メートルを超える建築物をいいます。(高さの算出方法は、区役所へお問い合わせください。)
- 近隣関係住民
中高層建築物の敷地境界線からその高さの2倍の範囲内にある土地または建築物の権利者及び居住者もしくは、中高層建築物によるテレビ電波受信障害の影響を明らかに受けると認められる人をいいます。
- 紛争
中高層建築物の建築に伴って生ずる日照・通風・採光の阻害、風害、テレビ電波受信障害等及び工事中の騒音・振動等、周辺の生活環境に及ぼす影響に関する近隣関係住民と建築主との間の紛争をいいます。
紛争の予防と調整の流れ(中高層建築物の建築に関する紛争の一般的な考え方)
- 1.建築主が「建築計画のお知らせ」看板(標識)を設置する(建築主の義務です)
- 2.近隣関係住民は、疑問点や心配な点があれば建築主(連絡先)に説明を求める
- 3.説明会の開催その他の方法により説明する(建築主は、近隣関係住民から説明会開催の申出があったときは、説明会を開催しなければなりません)
- 4.問題があれば話し合いをする
話し合いがまとまらないときは区に相談
(区の調整)
それでも決着しない場合は裁判所に移行
(裁判)
紛争予防のための建築主の義務
- 標識の設置義務
建築主は、建築確認申請を行う前に「建築計画のお知らせ」という看板(標識)を建築敷地に接する道路ごとに予め設置しなければなりません。
- 説明会の要望があった時の開催義務
建築主は、近隣関係住民から申し出があれば説明会を必ず開催し、建築に係る計画の内容について十分に説明しなければなりません。
- 説明会への出席義務
建築主は、説明会に必ず出席しなければなりません。
近隣関係住民は建築主によく説明してもらいましょう
建物の概要について、次の3項目について十分説明を受けましょう。(疑問に思うことは、何でも、何回でも説明してもらいましょう。)
- 建築計画の概要
建物の用途、建物の配置(外壁の位置、ベランダの位置等)及び高さ等の建築計画の概要を知りましょう。そして建設により生活環境にどのような影響があるのか説明を受けましょう。
- 工事の施工概要
工事の期間や周辺への影響、安全対策の説明を受けましょう。
- 建物の利用形態
建物の完成後の使われ方や、建物が営業施設の場合は営業時間等について説明を受けましょう。
問題があれば近隣関係住民と建築主双方で話し合いましょう
建築に伴う相隣問題の多くは民事問題であり、これらは当事者間で話し合って解決することが原則です。
近隣関係住民は、建築計画について説明を受け、その内容に問題があれば、建築主(又はその代理者)と話し合いを行うことになります。問題点をよく整理し、一方的にならないよう十分話し合うことが大切です。
話し合いについての留意点
- 話し合いがまとまった場合は、後日のトラブル防止のため、「工事協定書」等の文書で取り決めておくことが大切です。
- 建築行為については、さまざまな建築に関する法令等により規制を受けていますが、いずれにおいても近隣関係住民の同意を義務づけた規定はありません。このため同意がなくても法的には建築が可能です。
相隣問題の解決には、お互いが自分の権利だけを主張するのではなく、譲り合いの上で妥協点を見いだすことが必要です。
区が行う紛争の調整
- あっせん
当事者間での話し合いでは解決しない場合に、両当事者の申し出により、区が第三者的立場に立って調整を行う制度です。
- 調停
あっせんが不調になった場合に行われるものですが、区が調停を行うことが適当であると判断するとともに、原則として双方が調停への移行に合意することが前提となります。調停は、区が調停案を双方に提示することにより解決を図ろうとするものです。
あっせん・調停についての留意点
- あっせん及び調停は紛争当事者間の民事上の話し合いの延長線上にあるものであり、裁判所の判決のような強制力はありません。
- 資産価値や営業への影響に関する紛争、敷地境界や土地の所有権等の紛争は対象になりません。
- 区への相談、あっせん、調停には手数料等は一切必要ありません。
民事調停
民事調停は簡易裁判所及び地方裁判所で取り扱っている制度で、裁判官と民間から選ばれた2名の民事調停委員とで構成する調停委員会が行います。ここでの調停が成立すれば、その内容を記載した文書(調停調書)は裁判の確定判決と同様の効力を持ちます。また、公開が原則である裁判とは違い、秘密が守られ、経費も安く利用できます。
- 日照の阻害について
日照権を明文で定めた法律はありませんが、日照阻害が、社会生活上で我慢すべき程度(受忍限度)を著しく超えているときには保護される場合があります。一般的には、建築基準法等への適合、日照阻害の程度、地域性、被害回避への配慮の可能性などを判断の基準としています。
- プライバシーの阻害について
民法では、境界線から1メートル未満の距離に隣の宅地を眺められるような窓等を設ける場合は、目隠しをするよう規定がありますが、お互いがプライバシーを適度に保ち、快適な生活を営むためには、話し合いにより計画建物に工夫を求めるほか、自分の住宅においても室内にカーテンやブラインドを設置するなど、双方が譲り合う必要があります。
- 工事上の騒音・振動について
特定の作業による工事上の騒音・振動については、騒音規制法及び振動規制法等により規制されていますが、通常の作業については規制はありません。このため、工事の規模や周辺の状況等により騒音・振動の影響が特に大きくなると考えられる場合は、作業方法や作業時間、工事用車両の通行時間等について工事協定を締結するのが一般的です。事前に家屋調査を行い、施工に伴う家屋等の被害が生じた場合の損害賠償についても取り決めておくべきでしょう。
- テレビ電波受信障害について
中高層建築物の建築によりテレビ電波受信障害が発生する場合は、原因者である建築主が原則としてその対策を講じなくてはなりません。対策の方法としては、建築する建物の屋上に共聴アンテナを設置し、障害をうける建物までケーブルを接続する方法や、ケーブルテレビを利用する方法等があります。
- 風害について
中高層建築物の建築による風の影響については、地形や周辺建物の状況により左右されるため、その程度や具体的被害が発生するかどうかについての予測は困難です。このため、風害が心配される場合は、計画建物の周りに防風効果のある樹木を植えたり、将来具体的被害が生じた場合の補償を工事協定書等に盛り込んで解決することが一般的です。
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