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平成14年12月13日、貴職から当審議会に諮問のありました、「ごみ減量のための清掃事業のあり方と費用負担」について、別添のとおり答申いたします。
平成16年3月30日
荒川区長藤澤志光殿
荒川区清掃審議会会長松波淳也
当審議会は、平成14年12月13日に区長から「ごみ減量のための清掃事業のあり方と費用負担」について諮問を受け、ごみ減量目標をどのように早期に、また確実に達成していくか、そして新たなサービス提供にあたっては経費の負担はどうあるべきかを調査・検討するため、この間さまざまな視点から議論を重ねてきた。
区では、平成12年4月に東京都から清掃事業の移管を受けるに先立ち、事業を実施していく基本的な指針として、平成12年度から平成23年度を計画期間とした一般廃棄物処理基本計画(*1)を策定した。本計画では、区内で発生する一般廃棄物(家庭廃棄物及び事業系一般廃棄物*2)を対象に、平成23年度ごみ量を、平成10年度ごみ量に対して30%削減することを目標としている。
ごみ量の推移では、前年度と比較した1日1人当たりのごみ量は逓減傾向が継続しているものの、区全体のごみ量は計画目標値を達成していない。また、平成14年度決算を見ると、ごみ処理に約32億円の費用がかかっている。これは、区民1人当たりで約17,000円、一世帯当たり約39,000円に相当する。
ごみ処理費用の財源には主に税が充てられており、ごみを減量することにより、ごみ処理費用を縮減していくことは、財政面への効果も期待できる。
現在使用している最終処分場は、東京湾内最後の処分場とされており、依然最終処分場のひっ迫した状況は変わっていない。そのため、効果的なごみ減量施策を展開することにより、減量目標を確実に達成し、最終処分場の延命化を図っていく必要がある。
区内で発生するごみは、区が収集する家庭生活から発生するごみ及び1日平均50キログラム未満のごみを排出する事業所のごみと、事業者が自己処理責任(*3)に基づき、自らまたは自ら処理できない場合には一般廃棄物処理業者(*4)に委託して処理施設に持ち込み、処理する「持込ごみ」に分かれる。
区の発生ごみ量(区が収集したごみ及び持込ごみ)は、平成元年度の74,544トンをピークに、平成8年12月に行われた事業系ごみの全面有料化や平成11年10月に開始された行政による資源回収などの影響により減少を続けていたが、平成13年度は前年度に対し、114トン(0.2%)の増加、平成14年度は前年度に対し、616トン(1%)の減少という結果となっている(基礎資料【1】、【2】参照)。
資源物の回収については、本来、製造・販売事業者に回収・再使用・再生利用を義務付け、市場のシステムを通して資源の循環が成り立つような仕組みが追求されるべきである。
しかし、現状では事業者による回収の仕組みが構築されておらず、行政が回収を行っている状況にある。区では、古紙・びん・缶について、平成11年10月から区内全域を対象として、ごみ集積所での資源回収を開始している。
また、発泡スチロールトレイ(*8)については、区内7商店街を拠点に、ペットボトル(*9)については店頭および集合住宅におけるモデル事業(*10)で回収を行っている。
平成15年に実施した世論調査では、新たに望む分別品目として、ペットボトル74%、プラスチック容器包装(*11)が47%となっている(基礎資料【4】参照)。
一方、集団回収は、町会等の団体が回収業者と契約を結び、区民が主体的に資源化に取り組むものであり、区内で古くから積極的に行われてきた。
集団回収は、抜き取り行為の防止に効果があり、地域コミュニティの向上も図れることなどから、区では「行政回収から集団回収への移行」を進め、集団回収の区内全域拡大を目指している。
集団回収の推進は、町会組織がしっかりしている、再生資源業者が集積しているという区の特性を活かしたものであり、平成15年1月からは行政回収を試験的に停止し、移行による影響や回収方法などを調査・検討するモデル事業(*10)を開始し、平成16年3月現在で16町会が実施している。モデル事業の実施団体において、事業の実施前後にごみの組成調査を行った結果、ごみの中に含まれる古紙・びん・缶の割合が減ったという適性排出への効果もあった。
荒川区には、古くからものを大切にし、ごみを排出する場合でも、まずリサイクルを実践するという住民意識が根付いている。
また、リサイクルの実践に必要不可欠な再生資源業者が集積しており、区の地場産業の一つとして形成されている。
今後、ごみ減量・リサイクルを一層推進するためには、こうした区の地域特性を活かして、区民・事業者・区の役割を、発生抑制・再使用・再生利用という「*163つのR」の視点から明確化していく必要がある。
区民は、必要なものを必要な量だけ購入する、ものを繰り返し使うなど、ごみを出さない生活に心掛ける。
また、廃棄物の排出者として、区や事業者が用意する収集・回収・処理ルートに乗せるためのごみ・資源の分別や販売店等への返却、排出マナーの遵守などの責任を負う。
事業者は、生産・販売の段階において、製品の長寿命化や部品などの再使用に努めるとともに、過剰な容器・包装等の利用を自粛するなど、ごみの発生抑制に心掛ける。
また、事業者は、拡大生産者責任の考えに基づき、自己回収、再生利用、再商品化を進めなければならない。
さらに、事業活動に伴う廃棄物の排出者として、自らそれを適正に管理し、処理する責任(事業者自己処理責任)を負う。
区は、庁舎、区施設等において、ごみの発生抑制対策を講じる。
また、区民や事業者が適切にその責任・役割を果たせるよう、情報提供や普及啓発をするとともに、国などに対して循環型社会の構築に向け、必要に応じて法律等の整備を要請する。
さらに、区で収集したごみ・資源については適正に処理を行う。
区は、ごみ減量や排出マナーの向上などが期待できる、区民のニーズに合った収集形態を追求するとともに、清掃事業の運営にあたっては、効果的効率的な体制を維持するため、常に見直しを図る。
また、一般廃棄物の安定的な中間処理体制を確保するため、22区と共同して、清掃工場の配置の偏在や各区分担金制度などの課題について、積極的に解決できるよう努めなければならない。
区民は、区や事業者が用意する収集・処理ルートへの分別排出、協力等を行うとともに、その収集・処理に必要な費用について、負担する責任があることを認識する必要があり、区は情報提供に努めるべきである。
その上で、ごみ減量に向けた収集方法の導入など、税により負担すべき行政サービスの水準を明確にし、その水準を超えた場合には、区民に処理手数料としての負担を求めるべきである。
ごみ減量に向けて、ごみへの資源混入、ルール違反排出を改善していくため、環境教育、排出指導を充実・強化するとともに、より区民の協力を得やすい収集方法が必要となっている。
区民の環境問題への関心を高めるとともに、ごみ減量・リサイクル意識の向上につなげていくため、今後も学校での環境学習の充実や学習の場の提供など、環境学習の推進を図るべきである。
また、ごみに対する区民意識を高めるため、ごみ排出ルールの普及啓発も継続していくべきである。具体的には、転入者や外国人などに排出ルールを周知・徹底するため、他国語版も含めたごみの出し方のパンフレットの配布、集積所単位でのごみ会議の開催などさまざまな機会をとらえたPRを充実していくべきである。
ごみの減量に向けて、排出者の利便性を高めつつ、排出マナーの向上が図れる、より区民の協力を得やすい収集方法が必要となっている。
早朝・夜間収集は、多様化した区民のライフスタイルに対応できるとともに、まちの美観の向上、カラスなどによる集積所被害にも効果が期待できる。
戸別収集は、清掃車が入ることができない狭小路地への対応や収集効率の低下などの課題があるものの、ごみ排出に伴う負担が軽減できる。また、記名排出は、ごみの分別・減量に区民が責任を持って取り組むことから、排出マナーの向上も期待できる。
早朝・夜間収集や戸別収集等については、費用対効果などの検証を具体的に行い、実施に向けてはメリット・デメリットを区民に説明すべきである。
ごみに混入している資源化可能物の循環ルートが確立できれば、ごみ減量への効果が期待できる。
循環ルートを確保するためには、区民・事業者・区の役割分担を踏まえ、拡大生産者責任の追求しつつ、地域特性を踏まえた資源化の仕組みづくりを行うことが必要である。
循環型社会形成推進基本法およびリサイクル関連法により、事業者責任が明確化・具体化されつつあるが、不十分な内容となっている。
例えば容器包装リサイクル法では、事業者には再商品化に伴う資源化費用の分担を義務付けているが、市町村にも収集から保管までの役割を求めている。
事業者が自己処理責任を果たすためには、リターナブル化(*17)やデポジット制度(*18)の導入などにより、回収から資源化、再商品化まで事業者が行う拡大生産者責任を追求すべきであり、区は法律や制度の整備・充実について、国などに対して要請を進めていく必要がある。
区のごみ組成では、ごみの中に古紙・びん・缶という資源が依然として約2割混入しているとともに、生ごみ、プラスチックもごみに占める割合が高い。
生ごみ・プラスチックを対象としたごみ減量・資源化に向けた課題を整理し、地域特性を踏まえたごみ減量の仕組みづくりに着手すべきである。
また、資源の細分別に伴って、中間処理施設が必要となる場合が想定されることから、仕組み全体としての費用対効果を視野に入れ、検討をすべきである。
生ごみを資源化する方法としては、堆肥化が一般的であるが、担い手の組織作り、堆肥化ルートの確立など、安定的・継続的に実施できる体制づくりが必要である。また、コンポスト機(*19)については、設置する場所の確保やにおい対策なども必要となる。
バイオガス等(*20)の新しい技術開発の動向も見極めつつ、シンポジウム(*21)や勉強会を通じて、都市部での実施可能性について研究をしていくべきである。
プラスチック類を資源化する方法として、現状のマテリアルリサイクル(*22)では、汚れが付着していないこと、種類毎に分別してあることが前提条件になっている。区が分別回収を行う場合には、圧縮、梱包等に加え、種類毎の分別、異物の除去といった中間処理が必要となり、業務の受け手や場所等の確保が必要となる場合があることから、費用対効果を検討すべきである。
汚れの付着しているもの、種類別の分別が困難なものなどについては、「サーマルリサイクル(*23)」・「ケミカルリサイクル(*24)」という手法も開発されつつあり、早急に情報を収集していくべきである。
ごみ減量を継続し、最終処分場の延命化を図るためには、これまで以上に区民一人ひとりがごみ減量意識を持ち、減量行動に取り組む必要がある。
そのため、ごみ処理費用を公開するとともに、適正負担の仕組みを作るべきである。
区民のごみ問題やごみ減量の意識を高めるためには、ごみ処理にどのくらいの費用がかかっているのか、その費用の内訳はどうなっているのかなど、ごみ処理原価を区民に情報提供していくことが重要である。
また、中間処理については、今後も23区の共同処理体制が当分の間継続する現行の分担金制度の見直しを行い、各区のごみ減量努力が反映される、ごみ量に基づく制度にしていくべきである。
事業系ごみは、事業者自らの責任で処理することが原則であり、事業者が処理責任を果たすためには、適正な処理費用を負担すべきである。
そのため、現状の廃棄物処理手数料とごみ処理原価の乖離を見直すことが必要である。
ごみ処理にかかる費用について、新たに区民から負担を求めることにより、区民のごみ問題に対する関心・意識が高まり、過剰包装の拒否、ごみにならない製品の選択、買い物袋の持参など、「ごみを出さない」生活様式への変革が期待できる。
また、ごみの排出量に応じた負担を求めることにより、ごみ減量に努力した区民が、努力しない区民のごみ処理費用を負担するという、現在生じている不公平性が是正される。
家庭ごみを区分する仕組みが取り入れられることにより、事業者自己処理責任の徹底が図られる効果も期待できる。
ごみ減量施策として、家庭ごみの有料化が注目され、実施市町村が全国的に広がりつつある。
家庭ごみ有料化の手法としては、「指定袋制」、「定額制」、「従量制」があるが、ごみの減量効果の観点からは従量制が適している。「従量制」は、料金体系により「単純比例型」「多段階比例型」「一定量無料型」に分類される。
家庭ごみ有料化の実施事例では、制度導入後も引き続き減量効果がある市町村と、ごみ量が再び増加に転じるリバウンド現象が発生している市町村がある。
有料化によるごみ減量は、ごみ減量に向けた諸施策と合わせて実施することにより、効果が持続することが期待できる。
【従量制における比較】
手法の考え方
ごみ減量・資源化に積極的に取り組む区民とそうではない区民が、ごみ排出に応じた負担をすることにより、税負担の公平を図る。単純比例型と一定量無料型の折衷型ごみ処理が自治体固有の行政サービスとの観点から、一定量までを無料とする。
実施市町村・・・東京都日野市・東京都青梅市・滋賀県守山市・岐阜県関市・千葉県野田市・愛媛県西条市
家庭ごみ有料化の導入に際しては、ルール違反排出への対策が必要である。
有料化を実施している他市町村では、記名方式や戸別収集等を導入して排出者を明確化することで、ルール違反を指導し、効果を上げている。
記名排出を実施するにあたっては、住所や番号の記載など、排出者のプライバシーを保護する工夫も検討すべきである。また、中間処理施設に直接ごみを持ち込む手法を設けるという方法もある。
ごみの減量は、資源循環型社会を築く上で、欠かすことができない取り組みである。その減量効果は、最終処分場の延命化や区財政の改善(住民負担の軽減)をもたらすものと考える。
ごみの減量を達成するため、全国の市町村では、さまざまな努力が図られており、家庭ごみの有料化は有効な減量施策の1つと位置付けられている。
本審議会では、そういった視点から他市町村のごみ減量に向けた有料化の実例や実施手法について調査検討をおこない、施策提言を示したところであり、区においては、家庭ごみの有料化の実施についての検討を積極的にすべきである。
検討に当たっては、区民の理解を得る必要があることから、諸施策との併用や負担の公平性などを十分勘案するとともに、明確な減量目標を設定することが必要である。
また、ごみ減量を持続させるためには、定期的にごみ減量・資源化施策の見直しを図ることや、継続的にごみ問題等についての情報を伝えることにより、区民・事業者の理解と協力を得ていくことも必要と考える。
なお、ごみ減量は、収集・運搬の費用の縮減にとどまらず、中間処理等の共同処理費用の縮減にもつながっていく。家庭ごみの有料化を実施する場合には、区単独で実施するほか、23区総体として実施することで、より一層の効果が期待できることを申し添えておく。
かけがえのない地球環境を将来世代に引き継ぐため、区民・事業者・区が連携・協働して、環境への影響に配慮した取り組みを行うことが求められている。
区においては、資源循環型社会の構築を目指して、本提言に示した諸施策を着実に実施することにより、環境安心社会の実現に努めていくことを期待する。
10年度 | 11年度 | 12年度 | 13年度 | 14年度 | |
---|---|---|---|---|---|
基本計画見込み量:トン | - | - | 62,630 | 61,536 | 60,465 |
ごみ量実績:トン | 74,544 | 66,347 | 63,098 | 63,212 | 62,596 |
10年度 | 11年度 | 12年度 | 13年度 | 14年度 | |
---|---|---|---|---|---|
一人当りごみ量:トン | 1,138 | 1,009 | 943 | 936 | 914 |
人口(1月1日):人 | 179,412 | 180,238 | 183,244 | 185,057 | 187,694 |
厨芥 | 紙類 | 繊維 | 不燃ごみ | その他 | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|---|
荒川区 | 42.5 | 34.4 | 5.1 | 2.7 | 15.3 | 100.0 |
23区平均 | 37.4 | 42.8 | 4.5 | 0.8 | 14.5 | 100.0 |
調査期間・・・平成15年7月30日から8月14日
標本数・・・900票
調査対象・・・荒川区に居住する満20歳以上の個人
荒川区では、現在、可燃ごみ、不燃ごみ、資源(古紙、びん、缶)の3分別でごみ・資源の収集を行っています。ごみ減量を進める上で、今後、分別する品目を増やすとしたら、あなたはどんな品目の拡大を望みますか。次の中からいくつでも選んでください。
(n=780)
(無回答) 4.1%
ごみの減量、リサイクルを促進するため、家庭から出るごみを排出量に応じて有料で収集している市町村があります。あなたは、家庭から出るごみを有料で収集することについて、どのようにお考えですか。次の中から1つだけ選んでください。
(n=780)
(無回答) 1.2%
リサイクル事業費 504,370千円
ごみ収集・運搬費 2,362,650千円
ごみ処理・処分費 872,020千円
一人当り費用 17,000円
一世帯当たり費用 39,000円
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お問い合わせ
環境清掃部清掃リサイクル推進課管理計画係
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電話番号:03-5692-6690
ファクス:03-3895-4133
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