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平成12年9月4日、貴職から当審議会に諮問のありました、荒川区の地域特性にあった清掃事業のあり方について、鋭意審議を重ね、結論を得ましたので、別添のとおり答申いたします。
平成13年4月24日
荒川区長・藤枝和博殿
荒川区清掃審議会会長・松波淳也
現在の、大量生産・大量消費・大量廃棄という一方通行型の社会経済システムは便利で快適な生活を実現させると同時に、石油、金属、木材といった限りある資源やエネルギーを過度に消費し、環境に対して大きな負荷を与え、地球的規模での環境問題を引き起こしている。
かけがえのない地球環境を次世代に引き継いでいくためには、一方通行型の社会経済システムを見直し、限りある資源を繰り返し利用する循環型の社会をつくっていかなければならない。
また、現在、23区が埋立処分をしている中央防波堤外側埋立処分場と新海面埋立処分場が満杯になった後に、新たに東京港内に埋立処分場を確保することは極めて困難な状況となっている。したがって、様々なごみ減量化施策を実施することにより最終処分量を削減し、埋立処分場をできる限り延命化させなければならない。
一方、今後、ごみの減量を図り、清掃事業にかかわる経費の削減をすすめることは、行政にとって緊急かつ重大な課題となっている。このような中で、ごみ処理量を最小化し、資源循環型の清掃事業を推進することが求められている。
これまでの荒川区のごみ量の推移を見ると、平成元年度の94,804トンをピークに減少傾向にあり、平成11年度のごみ量は66,347トンと平成元年度からは約30%の減少となっている。平成12年度においても、さらに減少しているが、これは平成11年10月にはじまった週1回の資源回収を開始したことによる影響が大きく、資源回収の影響を除くとごみ量は横ばいの状況である。
平成12年3月に策定された荒川区一般廃棄物処理基本計画では、平成23年度において、52,000トンまでごみ量を削減することにしているが、計画の達成、そしてそれ以上の削減を目指して、区として新たなごみ減量の取り組みに着手していく必要がある。
また、現在、荒川区には清掃工場がないため、可燃ごみについては、23区で構成する清掃一部事務組合において焼却処理している。可燃ごみの焼却処理を近隣区の清掃工場に依存している荒川区は、より一層、ごみの減量に努めていくことが求められる。
平成11年10月に策定された荒川区基本構想においては、循環型社会の実現がその策定理念のひとつとなっており、区においても、今までの収集、運搬、処分に重点を置いていた事業の進め方を転換し、ごみの発生抑制(Reduce)、再使用(Reuse)、リサイクル(Recycle)という3つのRの取り組みを通し、ごみの減量を図り、そのうえで排出されたごみについて処理をするという資源循環型清掃事業を推進していくこととしている。
平成13年度において、清掃リサイクル事業にかかる予算は40.9億円となっており、区の予算全体の4.9%を占めている。効率的な清掃リサイクル事業を行うことにより、より一層リサイクルを推進していくとともに、ごみ減量を通して、区の負担を減らしていくことも必要である。
こういった、ごみ減量、循環型社会の形成の必要性を背景に、当審議会は区長から「荒川区における地域特性にあった清掃事業のあり方」について諮問を受けた。
ごみを減量し、資源循環型の清掃事業をすすめていくためには、区民、事業者(生産、流通、販売)、再生資源業者、行政などすべての主体が連携しながらそれぞれの役割を果たしていくことが必要である。そこで、区民、事業者が3つのRを実践しやすい「しくみづくり」と意識・行動を引き出すための「普及啓発」を行政が推進していくことが重要である。
荒川区の特性にあった清掃事業とは、荒川区らしい「しくみづくり」と「普及啓発」をどのように行うかであり、区のハード、ソフトを含めた特色を活用しながら、具体的な施策を展開していくことが求められる。
荒川区の地域特性にあった資源循環型清掃事業を展開していくうえで、考慮すべき区の特性は、様々なものが考えられるが、主に次の3点に絞って考察する。
その他の視点
下町特有の路地裏の狭小道路や住宅の密集した街並みが、災害に弱く都市基盤の整備に制約をもたらしている一方、人間味あふれる下町風情が、区民の連帯の絆を強いものとし、日常生活においてもさまざまな相互扶助の仕組みを生み出している。
これまで下町を支えていた人たちに目を向けると、荒川区の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は19.4%(23区中3位)に達しており、おおよそ平成20年には人口の4分の1が65歳以上の高齢者になると予想されている。
また、平成13年1月時点の外国人登録数は10,979人で人口の6.0%を占めており、23区平均3.1%と比べるとかなり高い(23区中3位)。
高齢者にとっては、加齢により、ごみ出しの行為そのものが負担になっている場合もある。こういった点を踏まえ、高齢者世帯等が安心して日常生活を送ることができるように、高齢者世帯等の居住、生活形態に合ったきめ細かな清掃事業を展開していくべきである。
また、多くの外国人の中には日本語がわからないため、日本人とのコミュニケーションがとりにくく、ごみの出し方がわからない外国人が多数いることが想定できる。また、外国人は、町会などの地域との接点がない場合も見受けられ、さらに、言葉の点からも区報等の通常の広報媒体がそれほど有効ではない場合がある。日本人、外国人を問わず、ごみ・資源をきちんと分別し、ルールを守った排出ができるようにしていくことは重要であるが、今後、外国人の実情に応じた行政からのアプローチを考えていく必要がある。
また、ワンルームマンション等に居住する、若年の単身者についても、居住期間が短い場合も多く、町会、自治会に加入しておらず地域と接点がない場合が多い。このため、単身者世帯の生活形態に合った広報のアプローチを考えていく必要がある。
さらに、荒川区ならではの下町風情が息づく相互扶助の仕組みを活用するなかで、一人ひとりの区民が、自らの問題としてごみ問題を考えていけるよう行政として工夫していく必要がある。例えば、集積所の管理や清掃等において、指導的な役割を果たす区民を育成することも有効である。
荒川区には、東京の経済発展を支える企業が集積し、住宅・商業・工業が混在するまちとして発展してきた。特に、区民に身近な小売店によって商店街が形成された。
区内での1平方キロメートル当たりの商店数は249店で区部平均の約200店より多いものの、大型店売場面積では文京区に次いで区部で2番目に小さく、小規模小売店の集積が特色といえる。
中心市街地活性化基本計画での区内購入率に関する調査(平成11年度実施)によれば、かばん・靴・衣服は50.9%、家電・家具等は31.8%と区内購入率は低いものの、食料品・日用品については95%が区内で購入されていることから、日常的な買物のほとんどが地域の小売店で行われていることがうかがえる。
小売店は、人々のものの購買活動が行われ、購買活動はその後の消費、廃棄というごみ発生のサイクルのはじまりである。また、事業者の立場として、小売店自らのごみ減量の取り組みが求められている。
荒川区においては中小の商店街が多く立地し、区民の購買活動が商店街の小売店に支えられており、他区に比べると、日常生活における区民と商店街の結びつきが強い。一方では小売店の数自体は減少しており、小売店、商店街の活性化という課題もある。
このような区民と商店街の結びつきの強さという特性を生かし、日常の購買活動が行われている小売店、商店街を、区民、事業者、行政の接点と考え、区はごみ減量に関する普及啓発の場として、様々な活動を行っていく必要がある。さらに商店街自らも、荒川ならではの「環境にやさしい商店街」を目指し、区内外に積極的にPRしていくべきである。
区としても、環境に配慮した事業展開ができるよう、事業者や商店街とともに考え、積極的にサポートしていくべきである。
荒川区には、明治時代に再生資源事業者が、他の地域から日暮里地域に移転してきたという歴史がある。
これは、
現在、東日暮里を中心に立地している古紙、ゴム、ウエスなどを扱う再生資源事業者の多くは、これらの業者が前身となっている。
これまで、区では区内再生資源事業者とともに集団回収や資源回収を実施してきた。
再生資源事業者が区内に所在するという立地条件は、収集、運搬作業を実施していくうえで、比較優位が働く条件であり、より一層の区民サービスの向上と効率的で柔軟な清掃事業の運営を行っていくため、再生資源事業者との連携をさらに図っていく必要がある。
例えば、現在、実施している清掃事業の中でも、ペットボトルの圧縮・こん包などについて、再生資源事業者に委託することなどが考えられる。
また、容器包装リサイクル法の対象品目であるプラスチック容器包装、紙製容器包装及び古布については、その資源回収のしくみづくりを考えると、区民による分別の徹底度、リサイクル技術の状況、リサイクル市場の動向など様々な考慮すべき問題がある。しかしながら、循環型社会の実現のためには、これらの品目についても、その回収を検討していくべきであり、新たな資源回収のしくみづくりにおいて、区内再生資源事業者との連携を図ることが考えられる。
この新たな資源回収のしくみづくりにおいては、資源の受け入れ体制の整備状況を十分踏まえてリサイクル目標量を設定し、無理のないかたちでリサイクルをすすめることが必要である。
そして、区としては、再生資源事業者の集積を積極的に生かしていくため、行政と連携をとるしくみづくりを行っていくべきである。
また、リサイクルだけでなく、再使用(Reuse)、発生抑制(Reduce)の観点から、区内事業者等との連携を図り、不要となった家具等の有効利用を図っていくべきである。
資源循環型清掃事業の推進にあたっては、区民、事業者一人ひとりの意識・行動を変えていくことが重要である。このため、荒川区の地域特性に加え、区民、事業者が3つのRの役割を果たすための、具体的な行動を引き出す様々な方策に取り組んでいく必要がある。
区民、事業者における具体的な行動を引き出していくためには、様々な方法で普及啓発活動等を実施していく必要がある。
現在の環境問題の複雑・多様化を背景に環境教育・環境学習で扱われる内容は幅広く多様であるが、その取り組みの入り口のひとつとして毎日の生活にかかわるごみ問題を位置づけることが考えられる。例えば、子供の頃からのごみ減量意識を培うため、現在、小学4年で行っている環境カリキュラムに加え、実際にごみを収集している職員の体験を通じた環境学習を様々な学年に応じて実施していくべきである。
また、子供だけでなく、広く一般区民に対して、工夫して普及啓発を実施していく必要がある。その際、普及啓発の中身についても検討していく必要がある。例えば、家庭から出るごみについては、現在、主に税金で処理されており無料であることから、区民にとってごみ減量のインセンティブ(誘因)が働かず、またごみ処理費用の負担の公平性という点からも課題がある。そこで、ごみ処理に要する費用等、ごみ処理の実態を区民に伝えるという考え方も大切である。
このように普及啓発を実施していくとともに、「荒川区環境配慮率先行動計画」にもあるように区自らのごみ減量の取り組みにより、区内事業者等に範を示していく必要がある。
例えば、大量に排出される庁舎等の生ごみのリサイクル等を実施することにより、区内事業者に対する普及啓発を行っていく。さらに家庭の生ごみの発生抑制についてもあわせて考える視点も必要である。
また、ごみ減量をすすめ循環型社会経済システムを形成していくためには、製造者、流通業者、販売業者などの事業者の役割が非常に重要である。事業者責任の観点から、ごみ減量を図るためのしくみづくりを国等に積極的に働きかけていくことも肝要である。
さらに、清掃事業の移管を受け、区としてごみ減量に向けて、本格的に取り組む必要がある。国においても、ごみ減量のための有効な施策のひとつとして家庭ごみの有料化について検討がされている。区においても、ごみ量が下げ止まりの傾向にある現在、排出者間の負担の公平性の観点も踏まえ、家庭ごみの有料化について調査、検討を行っていくべきである。
また、食品リサイクル法など新しい法の動向も見据えながら、区としての対応について検討していく必要がある。
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環境清掃部清掃リサイクル推進課管理計画係
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