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平成13年9月13日、貴職から当審議会に諮問のありました、「集団回収のあり方について【区の資源回収との関わり】」について、別添のとおり答申いたします。
平成14年3月22日
荒川区長・藤澤志光殿
荒川区清掃審議会会長・松波淳也
20世紀の私たちは、大量生産、大量消費の社会経済の仕組みを前提に、豊かで便利な生活を営んできた。その結果、廃棄物の排出量の増大とごみの埋立処分場の不足という深刻な問題がもたらされた。また、国際的な経済活動の拡大に伴い、資源やエネルギーは大量かつ急激に消費され、地球的規模での環境問題を引き起こしている。
こうした状況の中、「循環型社会形成推進基本法」をはじめ、リサイクルに関する様々な法律が整備されるなど、循環型社会の形成に向けた枠組みがつくられつつある。
特別区でも、平成12年4月に清掃事業が東京都から各区に移管され、区は今まで進めてきたリサイクル事業と清掃事業とを連携して、地域特性に応じた効果的な事業展開が可能となった。
荒川区においては、景気の後退や資源回収量の増加に伴い、ごみ量は年々減少しているが、依然として高い水準にある。ごみの焼却等の処理を他区に依存している状況からも、さらにごみ減量・リサイクルを進めていく必要がある。
そのための一つの方策として、区の地域特性を活かしながら、資源回収の充実を図っていくことが求められている。
資源回収の方法として荒川区では、以前から、区民が主体となった「集団回収」が行われてきた。この集団回収は、良質の資源を効率よく集めることができる回収方法である。荒川区は下町ならではの地域住民の結びつきが強いという特質があり、また再生資源事業者が区内に集積しているという特長もある。これらのことから、集団回収を推進していくことのできる土壌があると考えられる。
こうした状況を踏まえ、当審議会は、平成13年9月13日に荒川区長より、「集団回収のあり方について【区の資源回収との関わり】」の諮問を受け、精力的な検討を行ってきた。ここに検討結果を報告するものである。
ごみの減量・リサイクルの推進を図る一つの方法として資源の回収がある。現在、資源回収については、区民の自主的な活動である「集団回収」と平成11年10月から区内全域において開始された「区の資源回収」(以下「行政回収」という。)との2本立てとなっている。集団回収は区民同士がグループ(リサイクル推進団体、以下「団体」という。)をつくり、回収品目や回収方法を決めて、直接、資源回収業者に資源を引き渡すもので、区内では古くから行われてきた。こうした活動に対して区では、平成4年度から、東京都が実施してきた事業を引継ぎ、報奨金の支給等の支援を行っている。平成14年2月末現在、団体数は210団体であり、平成12年度の資源回収量は5,712トンにものぼる。これは、区内で回収される資源の半分近くを占め、資源の回収において大きな役割を果たしている。
平成13年度実施の区民アンケート調査(以下「区民アンケート」という。)では、区民の約4分の1の人が集団回収に参加しており、資源のリサイクルに取り組んでいる。
区ではその団体に対して様々な支援を行っている。
安定的な資源の回収ルートを確保するため、資源の回収量及び市況価格に応じて、資源回収業者に補助金を支給する。
平成12年度は雑誌・段ボールを対象に5,621千円を支給している。
平成12年度の集団回収に要した経費は、全体で約29百万円であり、1キログラム当たりに換算すると約5円になる。これは、行政回収での単価38円(人件費を除く)と比べてかなり低額である。
集団回収経費 28,879千円(回収経費単価 5円/キログラム)
(内訳)
集団回収を推進していくうえでは、次のような課題がある。
集団回収 | 行政回収 | |
---|---|---|
実施方法 | 区民が自主的に資源を回収する方法で、町会や自治会等の団体が、回収品目や回収方法等を決めて、家庭から出る資源を持ち寄り、資源回収業者へ引き渡す | 区が週1回資源の日を決めて、「ごみ集積所」を利用して、資源を回収する |
規模 | 団体数:210団体(14年2月末) | 回収拠点:ごみ集積所(約5,700箇所) |
回収量(12年度) | 総量5,712トン (内訳)古紙5,481トン、リターナブルびん36トン、アルミ缶153トン、古布42トン |
総量6,219トン (内訳)3,962トン、びん1,556トン、缶701トン |
区の支援及び負担(12年度決算額) | 28,879千円 (内訳)報奨金の支給22,627千円、消耗品の支給631千円、回収業者の支援5,621千円 |
236,309千円 (内訳)回収経費185,964千円、資源化経費56,885千円、資源売却収入△6,540千円 |
事業の性格 |
◎リサイクル意識の向上やコミュニティの形成が図れる ◎少ない経費で、多くの(質の良い)資源を回収できる ▲対象品目が有価物に限定される ▲市況価格の影響を受けやすい |
◎個人で、リサイクルに参加できる ◎安定的に資源を回収できる ◎区内全域が対象で、拠点数が多く区民に身近な所で回収できる ▲回収にかかるコストが高い ▲正しい分別・出し方の徹底が難しい ▲資源の持ち去りが多い |
これからのリサイクルは、区民・事業者・行政の三者がそれぞれの責任を果たし、互いに協力するパートナーシップに基づいて進めていく必要があり、区民もこれまで以上に主体的に取り組むことが大切である。
集団回収は、区民が主体となって行う資源回収で、リサイクル意識の向上を図るとともに、PTAを中心に子供への教育効果も期待できる。そしてまた、地域で定期的に回収活動を行うことで、コミュニティ形成の一助ともなっている。
また、行政回収では、集積所からの資源の持ち去りが大きな問題となっているが、集団回収は資源を団体が管理するものであるため、こうした持ち去りの被害を少なくするというメリットもある。
コスト面でも、資源の回収から管理、業者への引渡しまでを区民自身が行うことにより、少ない経費で多くの質の高い資源が回収できるメリットがあるため、今後、区内全域に拡大していくことが望ましい。幸いなことに、区内には、再生資源事業者が集積しており、集団回収を拡大していくことのできる土壌がある。
ただし、拡大にあたっては、集団回収の目的やルールを各団体に説明し、十分な理解を得るとともに、各団体が情報や意見交換のできる場を設けることも必要である。
現行の回収品目において、古紙や古布など市況・需給関係のバランスが厳しいものがある。特に古布については、一部の自治体において再生資源事業者が引き取り拒否するなど、リサイクルルートの確保が困難な状況にもある。
荒川区は再生資源事業者の一大集積地であり、区でもこうした問題に積極的に取り組んで行く必要がある。そして、事業者の意見等を十分に聞き、安定的なリサイクルルートの構築を検討していくべきである。
本来は、事業者責任に基づくリサイクルや区民の自主的なリサイクルを進めていくことが望ましいが、カレットびん・スチール缶のように資源としての価値はあるが、市場の回収システムの中では回収に限界があるような場合、行政が直接関与するリサイクルが必要になる。しかしこれは、事業者責任に基づくリサイクルや集団回収が、資源循環型社会の中で定着するまでの間の補完的なリサイクルとして位置付けられるべきものであり、古紙・アルミ缶など集団回収と行政回収とで重複する品目については、集団回収にシフトしていくことが望ましい。さらに、集団回収方式でのメリットをより多く生かしていくため、回収品目の拡大等も行っていくべきである。そして将来的には、集団回収と行政回収とを併せた効率的な集団回収システムを検討していく必要がある。また、その際には、モデル事業を実施し、十分に検証するとともに、区内再生資源事業者の活用など、経費を削減する方法等についても検討すべきである。
集団回収を実施する団体に対する報奨金の支給については、平成4年7月に都から区に事務移管されたものである。そして、当時の報奨金単価は6円/キログラムあった。集団回収による回収量は、平成5年度に4,029トンであったが、その後、区民のリサイクル意識の高まりに伴い、平成9年度には平成5年度に比べ、約4割増の5,643トンを集めるに至った。報奨金は、集団回収に対する一定のインセンティブの役割を果たしてきた。しかしながら、集団回収は、区民の自主的・ボランティア的な活動であり、報奨金といった金銭による誘因ではなく、意識を高めることによって推進すべきとの考えに基づき、平成10年4月には、5円/キログラム、そして、平成11年10月には、いわゆる東京ルールIの内全域での展開に合わせて4円/キログラム、それぞれ引き下げを行ったところである。これにより、現在、荒川区は、報奨金について23区の中で一番低い金額となっている。その後、集団回収については、平成12年度まで、5,000トン台で推移しているが、現在の集団回収と行政回収の2本立てによる実施により、両者の回収方式での行政コストの差など両者のメリット・デメリットが明らかになってきた。また現在、町会等においては、報奨金が活動運営費等として有効な財源となっていることから、より一層集団回収を推進していくためには、報奨金の金額について、再検討を行うことが必要である。
報奨金については、区民アンケートでも過半数の人が「必要である」と回答しており、集団回収を進めていく中で、重要な支援策の一つになっている。
集団回収を拡大していくためには、報奨金の対象、金額を含めて見直すことが必要である。さらに今後は、品目によって細かい配慮をすることも必要である。例えば、古紙のように団体にとって売却益が見込めず、報奨金が金銭面における唯一のインセンティブになっているものと、アルミ缶のように資源そのものが、40円から80円/キログラムある。今後、区民にとってのわかりやすさなども考慮に入れながら、品目ごとの金額の設定を検討していくべきである。
そして、資源回収全体のコストを見据えながら、集団回収へのインセンティブが効率的に働くよう、一定の時期に十分に検証し、見直していく。また、現在の、回収量に応じて報奨金を支給するような支給基準の考え方についても検討する必要がある。
集団回収を推進していくにあたっては、活動の担い手の問題が非常に大きい。実際に活動している団体を見ても、人材の確保がスムーズにいっているところと、苦労しているところがある。地域の中から人材が育つよう、地域に根付いたリサイクルシステムを検討していくべきである。
集団回収の担い手として、若い人の育成や後継者づくりに成功している団体に、そのノウハウを提供してもらう機会を設けるなど、活動方法等が全体に行きわたるようなしくみを検討する必要がある。
また、講習会等の実施により、集団回収を実施する地域のリーダーを養成するとともに、集団回収の立ち上げ時に、養成したリーダーを派遣する方法等についても検討すべきである。さらに、リーダー認定証(終了証)を交付することや、集団回収活動に積極的な区民を表彰する制度を新たに設けるなど、意識の高揚を図っていく必要がある。
集団回収への参加率の向上を図るためには、ある程度、拠点数を増やすことも必要である。こうした回収場所や資源の保管場所については、本来、団体が自主的に確保すべきものであるが、なかなか容易でない状況にある。公共施設等の利用を要望する声も上がっており、区は公園や学校等の公共施設の利用を検討する必要がある。学校等を保管場所として活用することは、子供たちへの環境学習の面からも教育効果が期待できると思われる。
消耗品の支給については、団体が集団回収を行う際に、より活動がしやすいよう、ニーズに合ったものを工夫する必要がある。
また、現在、アルミ缶の回収団体に対しては、空き缶圧縮機の貸し出しを行っているが、それ以外の団体にも台車等の資源回収に必要な備品の貸し出し等を検討する必要がある。
集団回収の実施方法や参加のルール等について、区報やホームページ、マニュアルを通じて、積極的にPRするほか、集団回収の活動内容についても幅広く区民に紹介する必要がある。また、必要に応じて職員が積極的に地域に出向き、チラシ等を配布しながら、集団回収の必要性や意義について説明していくことも肝要である。
小・中学生からリサイクルに関するPR標語を募集するなどの取り組みをさらに拡大し、大人だけでなく、子供への啓発方法についても充実する。
さらに、小・中学生を対象とした環境教育について、学校や教育委員会との連携を図り、重点的に取り組むとともに、地域や家庭でリサイクルについて学習できるようなPR方法を検討する必要がある。
現在、区内小中学校では、給食の調理くずや食べ残しを民間委託によりリサイクルしている。こうした状況を子供たちに十分説明し、会社(施設)見学会を実施するなど、食品のリサイクルが体験できるような機会を増やすことで、リサイクルへの関心を高めていくことも有効である。
広く区民に対しては、リサイクルイベント・講習会・勉強会等を開催し、参加した区民との連携を図ることで、徐々に区民参加の幅を増やしていく必要がある。
また、清掃リサイクル施設の見学会をさらに充実させていくことや、資源回収量の多い団体を表彰するなど、様々な方法で意識啓発を図っていくべきである。
集団回収では各団体が資源を管理するため、行政回収に比べて、資源の持ち去りは少なくなるが、さらに持ち去り防止策として、警告用の旗の設置や回収用コンテナへの表示等、集団回収である旨を明示する方法等を検討すべきである。また、集団回収を活性化する中で、資源の持ち去りを助長することのないような方策を検討していく必要がある。
集団回収のシステムが円滑に進むよう、区としても再生資源事業者との連携を図っていく必要がある。そのため、集団回収の拡大に併せ、逆有償になっている品目(カレットびん・スチール缶)についても回収品目とできるよう、資源回収業者への支援を検討する必要がある。さらに、地域内の集団回収実施日をできるだけ同じにするなど、より効率的な資源回収方法を構築するため、区は団体や資源回収業者との必要な調整を積極的に行っていくべきである。
古紙等の再利用があまり進まず、在庫過剰のため、古紙価格が下落している。安定的なリサイクルルートを確保するため、東京都や国等に対して、再生品の利用促進のための措置について、さらに要望していく必要がある。また、メーカー等に対しても、さらなる再生原料の利用等を要望していくべきである。
全115町会のうち約4割の町会で、集団回収を実施していない。これらの中には、行政回収を実施することにより、それまで行っていた集団回収を中止した町会等も含まれている。区はこれらの町会等に対し、今回、集団回収を推進するという方向性を打ち出したことに対する戸惑いを解消するため、改めて経緯や必要性について十分な説明を行っていくなど、特段の理解をいただきながら集団回収を拡大していく必要がある。また、近年、区内でのマンション建設がかなり進んでいることから、こうしたマンションへのPR方法についても検討すべきである。
集団回収の拡大を図るため、町会を基本に比較的参加しやすい集合住宅やPTAについても個別に訪問し、集団回収に関するノウハウを提供することにより、加入を呼びかける。また、リサイクルに興味を持っていても、なかなか行動できない人も多いことから、集団回収のきっかけづくりとなるよう、相談窓口の設置などを検討すべきである。
さらに、新たに活動を始める団体が取り組みやすいよう、集団回収を成功させている町会担当者等を講師とした講習会の開催や活動場所についての情報提供など、よりきめ細かな取り組みを行っていく必要がある。
マンションについては、住民の入居と同時に集団回収を開始できるようなシステムも検討する必要がある。
また、集団回収の活動を広く周知するためには、PRビデオを作製するなど、PR方法を工夫する必要がある。また、担い手を確保するため、区民向けのリサイクル講座を実施するなど、リサイクル活動の中心となるリーダーを養成する。併せて活動を担う人材を一時的に派遣する方法や近隣町会同士が連携し、助け合えるようなしくみづくりを検討するなど、集団回収活動の立ち上げ時のサポートを行っていく必要がある。
集団回収に併せて行政回収を実施することで、区民のリサイクル意識を高めるという一定の成果を得ることができた。しかし、この2つの資源回収が実施される中で、集団回収のメリットがより明確になった。集団回収は少ない経費でより多くの質の良い資源を回収することができるだけでなく、地域でのリサイクル意識の向上やコミュニティの形成にも役に立つものである。さらに、荒川区においては、再生資源事業者の集積があり、こういった事業者の活動を通して集団回収を進めることが可能である。こうしたことから、行政の手によるリサイクルよりも、意識の高い区民の行動と十分なノウハウを持った再生資源事業者と、区の適切なサポートのバランスの下で、民間主導のリサイクル体制の構築を検討していく必要がある。以上のことから、「3 集団回収の拡大の方策」に記載した様々な取り組みにより、町会を中心に働きかけを行い、集団回収の拡大を推進していくべきである。そして、一定の条件の下で行政回収から集団回収へシフトすることが必要である。
行政回収は、集団回収に比べ、個人でリサイクルに参加できる、拠点数が多く資源を出しやすいなど、利便性の点で優れている。このため、行政回収を廃止する場合には、資源をごみに戻さないような状況をつくる必要がある。
リサイクル意識の向上を図り、集団回収を活性化することで、資源の大半を集団回収で回収する状況が生まれていることが必要である。その状況とは、次のようなことが考えられる。
区は一般廃棄物の減量に関して、区民の自主的な活動の促進を図るとともに、一般廃棄物を適正に処理するため必要な措置を講じるよう、廃棄物処理法において規定されている。これにより、区は区民の日常生活に密着した清掃リサイクル事業について統括的な責任をもつことになる。
従って、民間の集団回収システムが整備されるにあたっては、区民にとって利便性が高く安定的なリサイクルシステムとなるよう、区としても最大限配慮すべきである。
現在、有料ごみ処理券を張付して、行政回収に出している事業者も多い。本来、事業活動に伴って排出される資源は、事業者自らの責任で処理すべきであり、事業系の資源のリサイクルルートを構築する必要がある。ただし、区内事業者の多くが中小規模で経済的基盤がぜい弱なこともあり、事業者自らの責任でリサイクルに取り組むことが困難な場合も多い。区が事業者に対して、支援策を検討することも必要である。
また、会社や事務所から古紙を回収する「エコノミックリサイクル」のようなシステムをその他の品目でも実施できるよう、検討していく必要がある。
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