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江戸時代から続く下町である荒川区には、江戸の技術を今に伝える伝統工芸の職人が数多くいます。そのひとつが三味線作り。三味線は、長い棹と小さな胴、三本の弦からなる日本の伝統的な弦楽器ですが、実際に演奏したことがある人は少ないかもしれません。三味線が奏でる音楽を、店舗兼工房で体験してみましょう。
目の前を都電荒川線が走る、のんびりとした住宅街にたたずむ三味線かとう。創業は1989年で、店主の加藤金治さんは荒川区登録無形文化財保持者です。開放的なガラス張りのお店に興味を惹かれて通りすがりに覗きにくる人もいるそう。店内では、お客さんとやり取りをしながら三味線の胴の皮張りをする加藤さんの作業を間近で眺めることができます。
父が三味線作りの職人だったことから、中学卒業とともに三味線作りの道に入った加藤さん。棹を作る職人だった父のすすめで、加藤さん自身は修理などの注文が多い皮張りを専門に選んだそうです。7年間の修行の末、24歳で独立。以来、三味線作り一筋に生きてきました。皮張りの作業には、江戸時代から受け継がれてきた技術を駆使し、木や竹、もち米から作られた糊などの天然素材を材料として使っています。
加藤さんは、三味線の伝統技術を次の世代へ引き継ぐことを目的に、三味線の普及にも取り組んでいます。その一つが、加藤さんが考案した「エレクトリック三味線」です。専用のマイクを内蔵した三味線で、いろんな楽器との合奏ができることから、国内外の有名ミュージシャンのライブなどでも使用されています。そのほか、今はお休み中ですが、コロナ禍以前には店内を開放した「ちとしゃん亭」で三味線ライブを定期的に開催。お店の外までお客さんが集まる、地域の人気イベントとして親しまれていました。
お店では、加藤さんが作った三味線を実際に弾くことができる三味線体験ができます(要予約)。指導してくれるのは、加藤さんの後継者で、義理の息子でもある倉橋勝さん。ギターなど弦楽器の演奏経験がある人は、すぐに三味線のコツをつかむことができるはず。初心者でも楽しく基礎を学ぶことができ、自分で奏でる三味線の音色に思わず感動するはず。
まずは三味線の基本的な持ち方から学びます。胴を右太ももに乗せ、棹は縦ぎみに構えます。撥(ばち)を右手で持ち、三味線の胴に対して平行に弾きます。左手には、親指と人差し指の間に掛ける編み物の小道具である指掛けを装着。指掛けをつけることによって、三味線の棹を行き来するときの滑りを良くし、様々な音を出すことができます。
30分ほど教えてもらうと、初めての人でも「さくらさくら」が弾けるようになります。楽譜が読めなくても問題ありません。音符は三味線の弦に合わせたわかりやすい図表で記述されています。
店舗の一階では、三味線や三味線用の小道具を購入することができます。三味線の譜本やCDの販売もしています。
ますますペースが速まる日常生活のなかで、伝統工芸はより価値のある役割を担っています。三味線かとうは、この貴重な技術を後世に繋いでいくべく、ここ荒川でたゆまぬ努力を続けています。
尾久エリア
東京都荒川区東尾久6-26-4
03-3892-6363
10:00~18:00
日曜、祝日
三味線の演奏体験:約60分
1,500円
都電荒川線「東尾久三丁目」停留場より徒歩2分、日暮里・舎人ライナー「熊野前」駅より徒歩3分
体験予約はメールにて受付
chitoshan@shamisen-katoh.com
更新日:2025年1月14日