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東尾久本町通りふれあい館には萩原睦氏の「16:23」があります。
作品説明
自身にとって日々何気なく過ごす中で大切にしたいと感じている「記憶」の中の「時間」を、「ガラス」と「写真」と「言葉」を用いて表現を行なった。モチーフは太陽が西の空に沈んだ後、東の空に数分間だけ現れる紺色の「地球の影」とその上に現れる「オーロラヴェール」と呼ばれるピンク色の帯状の光を、自身の実際の記憶を元に制作した。ガラスの器は記憶を内包させ留める形として捉え、器を覗き込んだときに空に囲まれている状況を想像できる作品を目指した。また、実際に撮影した「写真」の表現と、空気、温度、湿度、匂いなど視覚では伝わらない感覚を「言葉」で表現した。さまざまな感覚で「記憶」の中の「時間」を感じてほしい。
16:23
はじまりとおわりのはざまで わたしたちは時を歩む
透き通った優しい風が 水平線から海を渡って髪の隙間を通りすぎ 世界の影を取り払いながら そこら中を透明に満たしていく
記憶の底の重たい影も こぼれ落ちた溜息と共に 空に向かって溶けていった
三日月の背中に意識を巡らせ 小石の歴史に思いを馳せる ポケットの中の小枝さえ 光に透かすと透明だった
気づけば金星が瞬いている 空はオーロラの欠片を身に纏い これから続く夜のはじまりへと 足音を立てずに向かうのだ
世界に影が満ちる時 ひとすじ流れた星の光を そっと両手ですくいとり 再び地球に舞い戻ろう
はじまりとおわりのはざまで わたしたちは時を歩む 誰かにこの光を手渡すために
更新日:2024年2月29日