荒川ゆうネットアーカイブ
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荒川区の職人さんにインタビュー

荒川区の魅力のひとつに「職人さん」の存在があります。区の無形文化財(工芸技術)保持者はおよそ60名で、なかには江戸時代から続く伝統技術の後継者もいます。
職人さん自らが実演や即売を行う「あらかわの伝統技術展」では、生み出される作品の素晴らしさはもちろん、技を極めた職人さんを間近に感じることが出来ます。30回記念を迎える昨年は例年にも増して区内外から多くの方が訪れました。彩り鮮やかな作品を製作されている3人の職人さんにお話を伺いました。
また「あらかわ職人マップ」にも区内の職人さんのリストが網羅されていますので、逸品を求めたい人は是非活用されてはいかがでしょうか。

人形結髪 小島一男さん(東日暮里)

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右から老人、若人、官女

 人形結髪職人の小島さん。息子さんも江東区の人形頭職人で、今回の伝統技術展は親子共演でした。ひとつの人形が完成するまでには、桐塑(桐のおがくずを固めたもの)で人形生地を作る“人形生地職人”、人形生地に胡粉を塗り重ねて顔の形を作り目や髪の生え際などを描く“人形頭職人”、人形頭に髪を付けて結い上げる“人形結髪職人”、できあがった人形頭に胴を付け衣裳を着せて一体の人形に組み上げる“衣裳着人形職人”というように、幾つもの工程を職人が分業して作っています。
 区内には人形づくりに関係する職人が多く、小島さんのほかも、人形頭の高久秀芳さん(区指定無形文化財保持者)や衣裳着人形の竹中重男さん(区指定無形文化財保持者)、竹中温恵さん(区登録無形文化財保持者)がおり、伝統技術展にも出演していました。そんななか、かわいらしい人形の髪を結い上げている小島さんにお話を伺いました。
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おかっぱ頭が童女の可愛らしさを引き立てる

 人形結髪とは、人形頭に髪の毛を植え込み、結い上げていく技術です。人形の髪にはヨリをかけていない黒く染めた絹糸を使います。人形頭の髪の生え際に沿って筋を彫り、髪を植え込んでいきます。江戸時代には身分や年齢によって髪型が異なり、日本人形にもこのような様々なデザインの髪型が反映されています。小島さんはこれらの特徴をふまえて、人形頭に埋め込んだ髪を結い上げることで、人形の種類にあった様々な雰囲気を出すことができるのです。特に女形(おやま)は髷(まげ)が命なのだそうです。

 脱サラをしてこの業界に入ったという小島さん、リストラも定年もない職人の世界はいつでも自分との勝負といいます。職人の世界で生きるなら、昔のように小学校上級生から中学校3年生で入門すれば、25歳くらいで独立出来るのになぁと笑う笑顔が印象的でした。

つまみかんざし 戸村絹代さん(南千住)

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変わり剣ずまみでは特許を取得(写真手前)

 つまみかんざしとは正方形に切った羽二重という薄い絹の布をピンセットでつまみ(折りたたむ)、菊や薔薇などの花や、くす玉や蝶など、様々な形の飾りをつくり、簪(かんざし)に仕立てる技術です。お母さん(故・戸村ひでさん・区指定無形文化財保持者)から技を受け継いだ戸村さんにお話を伺いました。

 正方形の羽二重をピンセットで一つ一つ花びらの形につまみ、糊(小麦粉の澱粉質から作る)の台に並べ、糊の水分を吸わせて落ちつかせます。つまみ方も「剣ずまみ」「桜づまみ」「丸押しづまみ」などの技法があり、どんな簪を作るかで使い分けをします。次の「拭く」作業は「屋根瓦を拭く」に語源があるように、針金の上に先程の花びらを並べ簪の形に仕上げていきます。

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キュートな簪の数々に心がときめく

 つまみかんざし作りは、音も出ないし場所もとらないで自宅でできるのが魅力なのだそうです。しかし、時代が変わって、材料の入手など大変なこともあります。使う布も軽くて染まりやすい羽二重だけでなく、綸子(りんず)やちりめんも広まってきました。
 江戸時代から続く伝統の技も、工夫することでバリエーションに富んだ作品になります。七五三や成人式、結婚式のお色直し用の簪はもちろん、趣向を変えてブローチや携帯ストラップにしたものも人気ですし、創作簪では金魚なども作るそうです。
 華やかな色調と配色のつまみかんざしは、いずれも女性の黒髪に美しく映えますね。

犬張子 田中作典さん(日暮里)

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一つ一つのパーツが全て手仕事からなる

 江戸玩具として親しまれる愛らしい表情の犬張子。犬はお産が軽いことから出産を控えた妊婦や出産祝いに贈られました。でんでん太鼓を背負っているのは、素直な表裏のない子に育つようにという意味や、鳴り物は魔よけになるとの願いが込められています。
 田中さんは奥さんとの二人三脚で犬張子を今に伝えています。人形生地と同じように桐塑で原型をつくります。胡粉を刷毛で塗り、ヤスリをかけ、和紙を貼ります。その後、天竺木綿で磨くと、表面に胡粉独特の鮮やかさが出ます。

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大中小さまざまに揃った犬張子

 絵付は犬張子の表情の決め手となる作業です。細い面相筆を迷うことなく進める手に熟練の技を感じます。白地にパッと映える赤い着物やでんでん太鼓は奥さんの手によるものです。忙しい時期は朝から夜の11時まで働き、表に出掛けたことはなかったと言います。

 祖父の代から三代続いている犬張子ですが田中さんの代で終わりなのだそうです。何故弟子をとらないのかとお聞きしたところ「この世界で一人前になるのには10年以上はかかる。昭和12年の自分が今弟子をとっても満足に育て上げられるかわからない。」という厳しい返事が返ってきました。ひとつの仕事に真摯に丁寧に向き合ってきた田中さんの重みのある言葉です。

 
平成22年1月掲載記事
問い合わせ先 荒川区管理部情報システム課
電話:03-3802-3111(内線 2151)

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