荒川区 ぐるぐるグルメ(イラン・トルコ・ウズベキスタン)【ザクロ(ZAKURO)】
アリさん
このコーナーでは荒川区内で味わえる世界各国の魅力的な料理をご案内します。
今回は西日暮里のイラン・トルコ・ウズベキスタン料理レストラン「ザクロ」を訪ねます。

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サービス精神が旺盛で冗談好きなアリさん |
私は、イラン(ペルシャ)で生まれ育ちました。12歳からモスクなどで使用するタイルのデザイン制作を学び、15歳で輸入雑貨の商社を起こしました。
1994年に初来日した目的は、晴海の見本市でタイル作品を展示する事でした。
レストラン経営には全く素人でしたが、日本でレストランが成功するのではないかと思ったきっかけは1998年から2000年にかけての柘榴(ザクロ)ブームです。当時、取扱っていた商品のなかでもザクロと名のつくジュースやお菓子などの需要は右肩あがりという時代でした。
1999年にレストランをスタートさせ、やっとレストランが軌道に乗った頃、ザクロブームが去り赤字に。それまで人任せだったレストランを改革し、自ら料理の味をチェックして接客するなど、味やサービスを一層充実させることで経営を立て直しました。おかげで創業9年になります。
従業員には「お客さんを旧知の友達が訪ねてきたと思って接しなさい」と伝えています。
それは、幼い頃から慣れ親しんだイスラム教に「人間は神様に創られています。神様に創られたものを大切にすれば神様からも大切にされます。」という意味の言葉があるからです。
簡単な例えでいえば、彼氏に美味しい肉じゃがを作って食べさせ、彼が喜んでくれたなら、あなたは神さまから大切にされますよっていうことなんですね。(笑)

イランは、アジアの南西部にあります。国土が日本の5倍近く(164万8000平方キロ)あり、国土の3分の1を占める中央砂漠や多くの山脈、高原や海など起伏に富んだ土地柄です。地域により気候は異なりますが、同時期に同じ国内で寒暖差が40℃もある国はそうは無いでしょう。スキーから海辺のレジャーまで楽しむことができます。ペルシャ料理は、国内各地によって手に入る食材や味付けも異なり、何であると一口では括れない奥深さがあります。
広大な大地に様々な民族、宗教が混在し多様な文化を生み出しているそれがイランの魅力なのです。
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色とりどりのペルシャ絨毯に囲まれた店内 |
私は自国の良いところをこの店を通して皆さんに伝えたいと願っています。イランは、政治などで現在も多くの課題を抱えていますが「イラン」と聞いた時に「核」やどこまでが真実かわからない「テロ」を連想するのではなく「日暮里のザクロ」を思い浮かべてほしいですね。イランの大使館は港区にありますが、イランの文化的大使館の役割は荒川区西日暮里にあると自負しています。
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ディスプレイもエキゾチックなムード |
ここでは来店した時に靴を脱ぎ、ペルシャ絨毯の上にあぐらをかきます。調度品や内装もなるべく自国の雰囲気に近づくよう工夫し、壁にまで絨毯を敷きつめました。実際は壁にまで絨毯を敷きつめた家なんて無いに等しいのですが、それにも関わらず「まるでおばあちゃんの家に居るようだ」となつかしく思って頂いたり、遠く名古屋や大阪からでも通ってくる同胞がいるのは、こちらの心尽くしが伝わるからだと思います。

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豆やじゃがいもなど野菜を煮込んだ料理が多い。ハーブや香辛料の独特の風味がクセになる味。 |
私自身はイスラム教徒ですので酒・煙草はやりません。イランの西に接しているトルコは、お酒の種類も豊富です。ここではそれぞれの良い部分をミックスして食を楽しんでいただいているのでトルコ・ペルシャ料理とうたっています。
ウズベキスタン料理は、イランやトルコの田舎料理のような味わいがあります。1991年のソビエト連邦の崩壊を機に独立したウズベキスタンですが、長い歴史のなかではペルシャの一部だった時期もあります。その料理を食べたり、ウズベク語を聞いたりすると、私は大国に翻弄されつつも自国の文化を守ろうとした証を感じます。スパイスの使いかたも何百年か前のイランで行っていたようにクミンやペッパーを粒ごと使用しますし、ウズベギスタンの言語も「ありがとう」を「かたじけのうござる」と言うような古めかしい表現があるんですね。ウズベキスタン人の調理人は来日しても働く所が少ないので、彼らの方から私を見つけて面接にやってきます。日本でウズベキスタン料理を出すのは恐らく当店だけではないでしょうか。
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イスラムの戒律により肉は豚がNG(写真は羊肉)。魚は鱗のないもの(タコ・イカ・貝など)がNG。 |
トルコ料理、ペルシャ料理、ウズベキスタン料理は共通点もありますが似て非なるものです。その微妙な違いは日本のお客さんに伝わり難いですね。イラン王室の調理人から受け継いだレシピで作るクビデケバブという串焼きがお勧めで、これを目当てにイラン空港のパイロットが成田から駆けつけるほどなのですが、日本人のお客さんに「ハンバーガーみたい」と言われた時はがっかりしました。でもそれは日本人に馴染みのある豆腐の微妙な味わいが、外国人の私に分からないのと同じで、まさに生まれ育った環境に所以するのかもしれません。

ザクロの名前の不思議を教えましょう。
ザクロの産地はイランの首都であるテヘランの北にあるザクロス山脈(Zagros Mountains)です。ザクロス山脈の名をとり「ザクロス」と呼ばれた果物はシルクロードを通り中国に至る途中で「S」がおち「柘榴(ザクロ)」となりました。それがそのまま日本に渡ったために日本でもザクロと呼ばれます。
しかし本場イランではザクロは「アナール」と呼ばれます。これはアラブ人が果実を見たとき、まるで火が燃えさかっているような形状から「ナール(火の意)」と呼んだ語源が変化したものです。トルコでは今でも「ナール」と呼んでいますが、ナールと名付けたアラビア語は「ロンマン」に変化しました。
さまざまな文化が交流し変化した歴史、それは1つの果物の名前にさえ感じられます。
私の母はかねてより「自分の息子達を田舎の人とは結婚させない。行き来するのにお金も時間もかかって大変だから。」と言っていましたが、まさかシルクロードの果ての日本の女性と結婚するなんで考えてもみなかったでしょう。おかげさまで二人の子どもに恵まれ幸せな日々です。
ザクロは荒川区の端っこにありますが、日暮里駅前の再開発で改めて注目も集まってきています。ぜひ皆さんにも荒川区内にある「大使館」に遊びにきていただきたいと思っています。

タール0g、ニコチンは0.05g 煙もアロマのような香り。人気の水タバコは禁煙家をめざす喫煙者に急速にファンを拡大中。タバコのようにポケットに入らないその面倒さがかえって良いのだとか。
バラ・オレンジ・プラム・ミント・リコリスなど数種類のフレーバーを用意しています。

2007年にウズベキスタンの民族歌舞団でも活躍した日本初のウズベキスタンダンサー、ユルドゥスさんの華麗なショーが人気。
※ウズベキスタンダンスショー(土・8時〜)
※ウズベキスタンダンス教室 日程は
ザクロHP参照

腹(ベリー)ダンスの名の通り官能的な踊り。現地ではバーなどのお酒の席で踊られることの多いベリーダンスを健全で安心な空間でのアートショーとして堪能してもらいたいというアリさんの発案でお客さんは20代の女性が多い
※ベリーダンスショー(木/日・8時〜)
※ベリーダンス教室 日程はザクロHP参照
※取材記事は平成20年2月現在のものです。