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立川談幸師匠 |
立川流一門会による「立川流日暮里寄席」を日暮里サニーホールで、私も独演会を主にムーブ町屋で行っています。
また立川流・落語協会・落語芸術協会の会派を越えた中堅真打による競演「日暮里特選落語会」(日暮里サニーホール)も好評です。
落語会以外では「近頃笑える話がすくないから落語家でも呼ぼうか」という企画が多く、楽しい場面をみなさんが欲しているんですね。荒川シルバー大学で年配の生徒さん達を前に高座を務めさせていただいたこともあります。下町ならではの土地柄なのか、気取らずに落語を聞いてくださり、一度気に入っていただけると長くご贔屓をいただけるのも嬉しい限りです。

一口で言えば噺家のキャラクターが百花繚乱ということでしょうか。古典落語を得意とする者も有れば、新作が得意な者も有り、雰囲気のやわらかい者も有れば、かたい者も有りと様々です。
ただ家元である師匠立川談志の芸に対する姿勢がはっきりしていますので、そこは弟子たちが共通して受け継いでいると思いますね。
真打昇進の条件のひとつに古典落語を100席修得しなくてはいけないというのも立川流の決まりです。古典落語といわれるものは500席前後有りますが、寄席で現在比較的多く演じられている噺は最大公約数で200席というところでしょう。

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二つ目 立川吉幸 |
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前座 立川松幸 |
噺が「面白くない」「時代にあわない」ということの他に「下げ(おち)がわからない」噺は演じられることが少ないですね。反対に気の利いている「下げ」ならば、その前を工夫して現代にもなんとか生かしたいと思います。
多くの名人上手が演じてきた噺、師匠、先輩から習った噺を、自分のものとしてどう解釈し演じるかは、噺家の価値観やセンスの問題です。良いネタ(噺)をどう調理するかはまさに腕次第、料理が美味しければ真似をしたいという人も出てくるでしょうし、そのように手を経ていくことでより噺が洗練されていくのです。
戦争中は「笑うことは不謹慎」とされ落語も制約を受けました。憚ることなく思いきり笑える今は幸せな時代です。

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星野屋 身投げ心中の場面 |
落語は「笑い」ばかりが先行しているように思われ勝ちですが底辺に大きく流れているものは「人情の機微」が通った世界です。現代は、隣近所の付き合いどころか、親子関係も夫婦関係も希薄な社会ですが、落語を聞くことで良き時代を懐かしんだり癒されている一面があるようです。落語の持つ良さは、どの時代にも共通したものゆえ、数百年にも渡って現代に引き継がれているのでしょう。
また「噺家は世情の粗で飯を喰い」という川柳がありますが、マクラ*などで時事問題を笑いに転換し人間の本音を語ります。落語は基本的に良い悪いは論じないんです。ただ「これがホントでしょ?本音でしょ?」という事を代弁することでお客さんの共感を得るんですね。
嘘をついたり人を傷つける笑いは、後味が悪く心地良いものではありませんが、落語はその点スッキリしています。
落語会の魅力は、人とのコミュニケーションがとりやすい事でしょうか。知らない人同士が顔見知りになり「あの時の誰それはおもしろかったね」「またどこかの落語会で」など自然と繋がりができるようです。
*マクラ=噺家が高座にあがって本題に入る前に話す部分をいう。

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豊かな語り口と表情が魅力 |
落語以外のお笑いだったらキャラクターだけで場が持つ事もあると思いますが、落語の場合「話芸」という技術がないともちません。簡単にいうと人物描写と情景描写、それがきちんとできれば、みな名人になれますよ。
それでも本人のキャラクターが優先するのでしょうが、そのキャラクターは噺の登場人物に投影させしゃべらせる事で滲んでくるんです。そこが落語を楽しむコツですね。
つまり落語の楽しみのひとつに、同じ内容の噺でも噺家が変わることで違った雰囲気がでる面白さがあります。
お客さんに如何に噺を伝わりやすくするか、面白く聴かせることが出来るかが技術で、そのために普段から稽古を重ねています。いくら良い素材でも料理がうまく出来なければ台無しになりますからね。

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寄席に色物は欠かさない 人気のロケット団 |
立川流では、弟子一同で、家元に年始の挨拶に伺い二つ目以上は手拭を納めます。家元からは、手拭とお年玉とを戴きます。
大人になってもお年玉を戴けるんですね。でも二つ目以上は前座に手拭とお年玉をあげなくてはいけません。
もらい放題なのは前座で、一門以外からも戴けますからチリも積もれば相当な額になるんですよ(笑)
その後、初高座へと出かけていきます。お正月の客席は着物姿の方が多く華やかで「幾代餅」や「初天神」など、出世や来福に関係している明るい噺がよくかかります。
お客様にとっての「初笑い」をおめでたい話ではじめたいということで、名作といえども心中したり親子が不幸になったりという噺はしないのでご安心を。
どうぞ皆さまお誘い合わせのうえ、ご来場ください。
■立川談幸ホームページ
http://www.d4.dion.ne.jp/~t-dankou/
※取材記事は平成20年1月現在のものです。