○荒川区災害対策基本条例

平成14年3月15日

条例第2号

目次

前文

第1章 総則(第1条―第6条)

第2章 予防対策(第7条―第20条)

第3章 応急対策(第21条―第30条)

第4章 復興対策(第31条)

第5章 委任(第32条)

附則

荒川区民は、区民の生命と生活を脅かす震災や水害などの危機に際し、自ら災害に立ち向かうとともに、互いに助け合い支え合い、困難を乗り越え、かけがえのないこのまちを守ってきた。

荒川のまちに息づく「自らの生命は自らが守る」という自助・自立の精神と、「自らのまちは自らが守る」という互助・連帯の精神は、すべての災害対策の基本となるべきものである。

私たちは、この精神を受け継ぎ、阪神・淡路大震災をはじめとする過去の大災害の教訓に学び、安全で安心して暮らせる「防災安心社会」の実現に向け、強い危機管理意識の下に力を合わせて災害に立ち向かう決意を表明し、ここに、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、大規模な震災、火災その他の災害(以下「災害」という。)に関する予防、応急及び復興に係る対策(以下「災害対策」という。)に関し、区長、区民、町会・自治会単位で区民が自主的に組織した防災組織(以下「防災区民組織」という。)、区内で事業を営む者(以下「事業者」という。)等の責務を明らかにするとともに、災害対策全般についての基本的事項を定めることにより、災害対策を総合的かつ計画的に推進し、もって区民の生命、身体及び財産を災害から保護することを目的とする。

(区長等の責務)

第2条 区長は、災害から区民の生命、身体及び財産を保護するとともに、災害発生後の区民生活の再建及び都市の復興を図るため、区の組織及び機能を挙げて最大の努力を払うものとする。

2 区長は、荒川区地域防災計画(災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第42条の規定に基づき荒川区防災会議が作成するものをいう。)の定めるところにより、総合的かつ計画的に災害対策を推進するものとする。

3 区長は、前項に規定する荒川区地域防災計画その他の防災計画の策定に当たっては、地域の実態把握に努めるとともに、区民、防災区民組織及び事業者(以下「区民等」という。)並びに消防署、警察署等の災害対策を実施する機関(以下「防災関係機関」という。)から意見を聴取するものとする。

4 区長は、災害対策に関する事業(以下「災害対策事業」という。)の実施に当たっては、区民等及び防災関係機関の協力を求めるとともに、区民等が自主的に行う災害対策に関する活動に対し、必要な指導、助言及び支援を行うものとする。

5 区長は、災害対策事業の円滑な実施を図るため、国及び東京都(以下「都」という。)、他区その他の地方公共団体と連絡調整を行うとともに、国及び都、他区その他の地方公共団体が実施する災害対策事業に協力するものとする。

6 区職員は、災害時における迅速な応急活動等が実施できるよう、日頃から防災知識の習得に努めるとともに、非常時を想定した訓練等を通じて、危機管理意識及び災害対策に係る実践能力の維持・向上に努めるものとする。

(区民の責務)

第3条 区民は、日頃から防災知識の習得に努め、自らの住居からの出火を防止するとともに、災害に備え、次に掲げる手段を講ずるよう努めるものとする。

(1) 住居等の耐震性及び耐火性の確保

(2) 家具の転倒防止

(3) 初期消火に必要な消火器等の準備

(4) 消火及び生活用の貯水

(5) 飲料水及び食糧の確保

(6) 避難の経路、場所及び方法についての確認

(7) 前各号に掲げるもののほか、日常の防災対策に関し必要なこと。

2 区民は、区及び防災関係機関が実施する災害対策事業に協力するとともに、防災訓練に積極的に参加するなどして、防災行動力を身につけるよう努めるものとする。

3 区民は、災害時においては、自らの安全を確保するとともに、情報の収集に努め、相互に協力して、初期消火並びに消防署及び警察署への通報等を行い、区民全体の生命、身体及び財産の安全の確保並びに地域社会の混乱の防止に努めるものとする。

(防災区民組織の責務)

第4条 防災区民組織は、災害に備え、消火、救助及び救護の活動のために必要な資機材を整備するとともに、定期的に訓練を行うことにより、消火、救助及び救護に関する技術の習得及び向上に努めるものとする。

2 防災区民組織は、災害時においては、区、消防署、消防団、警察署、事業者等と協力して、消火、救助、救護、避難誘導、避難所運営等の活動に努めるものとする。

(事業者の責務)

第5条 事業者は、その社会的責任を自覚し、災害に備え、次に掲げる手段を講ずるよう努めるものとする。

(1) 施設及び設備の耐震性及び耐火性の確保

(2) 自衛消防隊等自主防災組織の設置

(3) 消火、救助及び救護に必要な資機材の整備

(4) 飲料水及び食糧の備蓄

(5) 前各号に掲げるもののほか、事業所の防災対策に関し必要なこと。

2 事業者は、区及び防災関係機関が実施する災害対策事業に協力するとともに、防災訓練等を実施し、災害対策の充実に努めるものとする。

3 事業者は、災害時においては、初期消火並びに消防署及び警察署への通報等を行うとともに、情報の収集に努め、事業所内の従業員及び顧客、事業所の周辺住民等の安全の確保に努めるものとする。

(帰宅困難者の責務)

第6条 区内の事業所、学校等に通勤し、又は通学する者等で徒歩により帰宅することが困難な者(以下「帰宅困難者」という。)は、災害時における帰宅に係る安全を確保するため、あらかじめ徒歩による帰宅経路の確認、家族との連絡手段の確保その他必要な準備を行うよう努めるものとする。

第2章 予防対策

(災害に強いまちづくりの推進)

第7条 区長は、安全で安心して暮らせる災害に強いまちをつくるため、次に掲げる施策を推進するものとする。

(1) 道路、公園等都市基盤の整備

(2) 市街地再開発事業等まちづくり事業の実施

(3) 都市施設の耐震性及び耐火性の確保

(4) 防災機能を備えた広場の設置

(5) 細街路の拡幅及び隅切りの整備

(6) ブロック塀等の生け垣化

(7) 耐火性の高い建築物への建替え

(8) 前各号に掲げるもののほか、都市の安全性を高めるために必要な施策

(火災の延焼防止措置)

第8条 区長は、災害時における初期消火及び火災の延焼防止のため、都と連携を図り、地域における消火器、消防水利、防災機能を備えた広場の設置等必要な施策を積極的に推進するとともに、区民等に対する消火訓練等を実施するものとする。

(防災意識の高揚等)

第9条 区長は、区及び防災関係機関が災害時に優先して行う応急活動の内容、区の防災体制の現状等について区民等に周知するとともに、防災に関する普及啓発活動を積極的に行い、区民等の防災意識の高揚及び防災知識の向上を図るものとする。

2 区長は、学校教育等を通じて、防災教育の充実を図るとともに、防災関係機関の協力の下、防災区民組織、事業者、地域の団体等が行う防災活動、まちづくり活動等を通じて、区民等の防災行動力の向上を図るものとする。

3 区長は、国、都その他防災研究機関が行う地域危険度等の調査・研究結果を、区民等に積極的に公表するものとする。

(消防団への支援)

第10条 区長は、消防団が行う消防活動、救助活動、救護活動、訓練等の消防団活動が円滑に行われるよう支援するとともに、消防団員の確保について協力を行うものとする。

(防災区民組織の育成)

第11条 区長は、防災区民組織の活動に対し、支援及び協力を行い、その充実を図るものとする。

2 区長は、消防署、消防団、警察署等の協力の下、防災区民組織に対し、消火、救助及び救護の訓練に必要な指導を行うものとする。

(災害ボランティアヘの支援)

第12条 区長は、災害時におけるボランティア活動の円滑な実施を確保するため、災害ボランティアの育成を図るとともに、必要な支援を行うものとする。

(情報収集・伝達体制の整備)

第13条 区長は、災害時における情報の迅速な収集及び伝達を図るため、防災行政無線、映像伝送システム等の情報システムを整備するとともに、災害時に正常に稼動するよう、防災関係機関、防災区民組織等と定期的に通信訓練を行うものとする。

(一時集合場所、避難所等の確保及び周知)

第14条 区長は、災害時に区民等が町会・自治会ごとに集合して周囲の状況を判断する一時集合場所、被災者を収容する避難所等をあらかじめ確保するとともに、区民等に避難方法を周知するものとする。

(備蓄体制の整備)

第15条 区長は、災害時における必要な物資の供給を円滑に行うため、備蓄倉庫等を整備するとともに、運搬及び配給の体制を確立するものとする。

(応急医療体制の整備)

第16条 区長は、災害時における多数の負傷者の治療等に迅速に対応できるよう、荒川区医師会等の医療関係機関、消防署等と協議し、災害時における救護所の開設、傷病者の搬送、医薬品の運搬等の応急医療体制を整備するものとする。

(要援護者の支援体制の整備)

第17条 区長は、高齢者、障害者、外国人等災害時に援護を要する者について、災害時における避難誘導等の支援体制を整備するものとする。

(ライフライン事業者との連携)

第18条 区長は、上下水道、電気、ガス、通信、交通等区民の生命又は社会生活の維持に必要な施設又は設備(以下「ライフライン」という。)を管理する事業者と、災害時における円滑な連携を取ることができるよう、十分協議を行い、連絡体制の整備を図るものとする。

(協定団体との協力体制の確立)

第19条 区長は、災害時における飲料水、食糧、医薬品その他生活必需品の供給、緊急輸送の確保等について、災害時における相互応援又は協力に関する協定を締結している都、他区、姉妹・友好都市、民間団体等(以下「協定団体」という。)との間において、定期的に協議を行い、協力体制を確立するとともに、その拡充を図るものとする。

(防災訓練の実施)

第20条 区長は、都、自衛隊その他の防災関係機関、防災区民組織、事業者等と連携を図り、市街地発災型訓練、避難所開設訓練等の実践的な防災訓練を実施するものとする。

第3章 応急対策

(災害の発生のおそれがある場合の初動態勢の確立)

第21条 区長は、大規模地震対策特別措置法(昭和53年法律第73号)第9条第1項の規定に基づく警戒宣言の発令があった場合等、区内で災害の発生のおそれがあるときは、直ちに防災行政無線等により区民等に周知するとともに、荒川区災害対策本部の設置等応急活動の態勢を速やかに確立するものとする。

2 前項に規定する場合においては、区民等は、防災活動の態勢を速やかに確立し、火気の使用の自主制限、安全点検、貯水等の予防的措置を講ずるものとする。

(災害発生時の初動態勢の確立及び応急活動の実施)

第22条 区長は、区内で災害が発生したときは、荒川区災害対策本部の設置等応急活動の態勢を速やかに整え、防災行政無線、区職員の実地調査等により迅速に被災状況等の情報を収集するとともに、防災関係機関、防災区民組織等と協力して救助、救護、避難誘導等の応急活動に当たるものとする。

2 区長は、前項の規定により収集した情報その他の応急対策に関する情報を防災行政無線等により、区民等に適切に提供するものとする。

3 区長は、区民の生命又は身体の安全の確保のため必要があると認めるときは、災害対策基本法の定めるところにより、避難の勧告、警戒区域の設定、立入りの制限等の措置を講ずるとともに、被害が甚大であるときは、自衛隊の災害派遣の要請を行うものとする。

(協定団体等への応援・協力要請等)

第23条 区長は、災害時において、応急活動に必要があると認めるときは、協定団体その他の地方公共団体、民間団体等に対し、応援又は協力を要請するものとする。

2 区長は、災害により防災関係機関の施設が倒壊し、又は使用が著しく困難になった場合において、応急活動に必要があると認めるときは、利用可能な区の施設を代替施設として提供するものとする。

(救援・救護)

第24条 区長は、災害時において、被災者の生活維持のため必要があると認めるときは、速やかに飲料水、食糧、医薬品その他生活必需品の運搬及び配給の態勢を整え、被災者に供給するものとする。

2 区長は、災害により多数の負傷者が発生したときは、速やかに救護所を設置し、医療関係機関及び防災関係機関と協力して傷病者への医療措置等を行うものとする。

(避難所運営等)

第25条 区長は、災害時において、被災者の収容のため必要があると認めるときは、速やかに避難所を開設し、防災区民組織等と連携してその運営に当たるものとする。

2 区長は、災害時において、被災者の居住場所の確保のため必要があると認めるときは、都と連携して応急仮設住宅の建設等を行うものとする。

(ボランティアの受入れ)

第26条 区長は、災害時において、区内外のボランティアによる救援活動が円滑に行われるよう、ボランティアの受入態勢を速やかに整え、ボランティアと連携して応急活動に当たるものとする。

(帰宅困難者への情報提供)

第27条 区長は、災害時において、帰宅困難者の帰宅に係る混乱を防止するため、他区その他の地方公共団体と連携を図り、帰宅困難者に対して適切に情報の提供等を行うものとする。

(ライフラインの復旧)

第28条 区長は、災害によりライフラインが被災したときは、各ライフラインの事業者に対し、速やかな復旧を要請するとともに、的確な情報提供を行うよう求めるものとする。

(保健衛生及び環境衛生の保持)

第29条 区長は、災害時において、被災者に対する健康相談等の保健衛生活動を行うとともに、地域の環境衛生保持のため、ごみ、し尿、がれき等の迅速な処理を行うものとする。

(死亡者及び行方不明者の取扱い)

第30条 区長は、災害により死亡者又は行方不明者が発生したときは、警察署等と連携を図り、遺体の収容、行方不明者の捜索等を行い、人心の安定を図るものとする。

第4章 復興対策

第31条 区長は、災害により地域が甚大な被害を受けたときは、国、都、防災関係機関等と連携し、全力を挙げて、被災した区民の生活復興及び被災地の市街地復興を図るものとする。

2 区長は、被災地の市街地復興に当たっては、荒川区震災等による被災市街地復興条例(平成13年荒川区条例第40号)に基づき、区民及び事業者と協働して、総合的かつ計画的に推進するものとする。

第5章 委任

第32条 この条例の施行に関し必要な事項は、区長が別に定める。

1 この条例は、公布の日から施行する。

2 大地震による延焼火災の防止等に関する条例(昭和55年荒川区条例第25号)は、廃止する。

荒川区災害対策基本条例

平成14年3月15日 条例第2号

(平成14年3月15日施行)

体系情報
第13編 区民生活/第6章
沿革情報
平成14年3月15日 条例第2号