○荒川区一時保護施設の設備及び運営の基準に関する条例

令和7年3月18日

条例第3号

(趣旨)

第1条 この条例は、児童福祉法(昭和22年法律第164号。以下「法」という。)第12条の4第2項の規定に基づき、荒川区における一時保護施設の設備及び運営に関する基準(次条及び第4条において「最低基準」という。)を定めるものとする。

(目的)

第2条 この最低基準は、一時保護施設に入所している児童が、明るく衛生的な環境において、素養があり、かつ、適切な訓練を受けた職員の支援により、心身ともに健やかに、かつ、安全に生活を送ることを保障するものとする。

(定義)

第3条 この条例で使用する用語の意義は、法で使用する用語の例による。

(最低基準の向上)

第4条 区長は、最低基準を常に向上させるよう努めるものとする。

2 一時保護施設は、最低基準を超えて、常にその設備及び運営を向上させなければならない。

3 最低基準を超えて設備を有し、又は運営する一時保護施設は、最低基準を理由として、設備又は運営を低下させてはならない。

(一時保護施設の一般原則)

第5条 一時保護施設は、入所している児童の権利に十分配慮するとともに、一人一人の人格を尊重して、その運営を行わなければならない。

2 一時保護施設は、児童の保護者及び地域社会に対し、当該一時保護施設の運営内容を適切に説明するよう努めなければならない。

3 一時保護施設は、その行う業務の質の評価を自ら行うとともに、定期的に外部の者による評価を受けて、それらの結果を公表し、常に業務の改善を図らなければならない。

(非常災害対策)

第6条 一時保護施設は、消火器等の消火用具、非常口その他非常災害に際して必要な設備を設けるとともに、非常災害に対する具体的計画を策定し、不断の注意を払い、訓練をするように努めなければならない。

(安全計画の策定等)

第7条 一時保護施設は、児童の安全の確保を図るため、当該一時保護施設の設備の安全点検、職員、児童等に対する施設外での活動、取組等を含めた一時保護施設での生活その他の日常生活における安全に関する教育、職員の研修及び訓練その他一時保護施設における安全に関する事項についての計画(以下この条において「安全計画」という。)を策定し、当該安全計画に従い必要な措置を講じなければならない。

2 前項に定めるもののほか、安全計画に関し必要な事項は、荒川区規則(以下「規則」という。)で定める。

(自動車を運行する場合の所在の確認)

第8条 一時保護施設は、児童の施設外での活動、取組等のための移動その他の児童の移動のために自動車を運行するときは、児童の乗車及び降車の際に、点呼その他の児童の所在を確実に把握することができる方法により、児童の所在を確認しなければならない。

(入所した児童への平等取扱原則)

第9条 一時保護施設は、入所している児童の国籍、信条、社会的身分等によって、差別的な取扱いをしてはならない。

(児童の権利擁護)

第10条 区長又は児童相談所長は、一時保護施設において一時保護を行うに当たっては、児童に対し、児童の権利、児童の権利を擁護する仕組み、一時保護を行う理由その他必要な事項について、年齢、発達の状況その他の当該児童の事情に応じた説明を行わなければならない。

2 一時保護施設は、入所した児童に対し、その意見又は意向(法第33条の3の3に規定する意見聴取等措置において表明された意見又は意向を含む。)を尊重した支援を行わなければならない。

(児童の権利の制限)

第11条 一時保護施設は、正当な理由なく、児童の権利を制限してはならない。

2 一時保護施設において、正当な理由がある場合に、やむを得ず児童の権利を制限するに当たっては、その理由について十分な説明を行い、児童の理解を得るよう努めなければならない。

(児童の行動の制限)

第12条 一時保護施設は、施錠等により児童の行動を制限してはならない。

(児童の所持品等)

第13条 一時保護施設は、合理的な理由なく、児童の所持する物の持込みを禁止してはならない。

2 一時保護施設において、合理的な理由がある場合に、やむを得ず児童の所持する物の持込みを禁止するに当たっては、その理由について十分な説明を行い、児童の理解を得た上でこれを行うよう努めなければならない。

3 一時保護施設において、児童の所持する物を保管する場合は、紛失、盗難、き損等が生じないような設備に保管しなければならない。

(虐待等の禁止)

第14条 一時保護施設の職員は、入所中の児童に対し、法第33条の10各号に掲げる行為その他当該児童の心身に有害な影響を与える行為をしてはならない。

(業務継続計画の策定等)

第15条 一時保護施設は、感染症及び非常災害の発生時において、入所している児童に対する支援の提供を継続的に行うため、及び非常時の体制で早期の業務の再開を図るための計画(以下この条において「業務継続計画」という。)を策定し、当該業務継続計画に従い必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

(設備の基準)

第16条 一時保護施設の設備の基準は、次に掲げる設備を設けることとする。

(1) 児童の居室

(2) 学習等を行う室

(3) 屋内運動場又は屋外運動場

(4) 相談室

(5) 食堂

(6) 調理室

(7) 浴室

(8) 便所

2 前項に定めるもののほか、一時保護施設の設備の基準に関し必要な事項は、規則で定める。

(職員の一般的要件)

第17条 一時保護施設に入所している児童の保護に従事する職員は、健全な心身を有し、豊かな人間性と倫理観を備えるとともに、児童福祉事業に熱意を有し、かつ、その理論及び実務について訓練を受けた者とする。

(職員の研修の機会の確保)

第18条 区長は、一時保護施設の職員の資質向上のために、規則で定めるところにより、研修の機会を確保しなければならない。

(職員等)

第19条 一時保護施設は、次に掲げる職員を置かなければならない。

(1) 児童指導員(児童の生活指導を行う者をいう。第3項及び第4項において同じ。)

(2) 嘱託医

(3) 看護師

(4) 保育士(国家戦略特別区域法(平成25年法律第107号)第12条の5第5項に規定する事業実施区域内にある一時保護施設にあっては、保育士又は当該事業実施区域に係る国家戦略特別区域限定保育士。第3項において同じ。)

(5) 心理療法担当職員

(6) 個別対応職員

(7) 学習指導員

(8) 栄養士又は管理栄養士

(9) 調理員

2 前項の規定にかかわらず、一時保護施設は、規則で定めるところにより、同項各号に掲げる職員を置かないことができる。

3 児童指導員及び保育士の総数並びに心理療法担当職員及び学習指導員の数の基準は、規則で定める。

4 児童指導員、心理療法担当職員及び学習指導員は、規則で定める資格を有する者でなければならない。

(夜間の職員配置)

第20条 一時保護施設は、夜間において、児童の安全を確保するために、規則で定める数の職員を置かなければならない。

(一時保護施設の管理者等)

第21条 一時保護施設は、人格が高潔で識見が高く、一時保護施設を適切に運営する能力を有する者を管理者として置かなければならない。

2 一時保護施設は、職員の指導及び教育を行う指導教育担当職員を置かなければならない。

3 指導教育担当職員は、規則で定める経験を有する者でなければならない。

4 一時保護施設の管理者及び指導教育担当職員は、規則で定めるところにより、研修を受けなければならない。ただし、やむを得ない理由があるときは、この限りでない。

(衛生管理等)

第22条 一時保護施設は、入所している児童の使用する設備、備品等について、衛生的な管理に努め、又は衛生上必要な措置を講じなければならない。

2 前項に定めるもののほか、衛生管理に関し必要な事項は、規則で定める。

(食事)

第23条 一時保護施設は、入所している児童に食事を提供するときは、食品の種類及び調理方法について、可能な限り変化に富み、栄養並びに入所している児童の身体的状況及び好を考慮した上で、当該一時保護施設内で調理する方法により行わなければならない。

2 一時保護施設は、児童の健康な生活の基本としての食を営む力の育成に努めなければならない。

3 前2項に定めるもののほか、食事に関し必要な事項は、規則で定める。

(入所した児童の健康状態の把握等)

第24条 児童相談所長は、入所した児童の健康状態を把握するために、当該児童の状況等に応じ、医師又は歯科医師による診察その他の必要な措置を講じなければならない。

2 前項の措置の実施により児童の健康状態を把握した医師又は歯科医師は、その結果について必要な事項を入所した児童の健康を記録する表に記入するとともに、必要に応じ一時保護の解除及び医療上の措置等必要な手続について、児童相談所長又は区長に勧告しなければならない。

(養護)

第25条 一時保護施設における養護は、児童の安定した生活環境を整えるとともに、生活支援及び教育を行いつつ児童を養育することにより、児童の心身の健やかな成長を支援することを目的として行わなければならない。

(生活支援、教育、親子関係再構築支援等)

第26条 一時保護施設における生活支援は、児童の自主性を尊重しつつ、基本的な生活習慣を確立するとともに、豊かな人間性及び社会性を養うことができるように行わなければならない。

2 一時保護施設における教育は、児童がその適性、能力等に応じた学習を行うことができるよう、適切な相談、助言、情報の提供等の支援により行わなければならない。

3 一時保護施設は、学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校(幼稚園を除く。)に在籍している児童が適切な教育を受けられるよう、当該児童の希望を尊重しつつ、その置かれている環境その他の事情を勘案し、通学の支援その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

4 一時保護施設は、児童の家庭の状況に応じ、親子関係の再構築等が図られるよう、必要な支援等を行わなければならない。

5 一時保護施設は、児童が適切な支援を受けられるよう、一時保護の解除後も当該解除を行った児童相談所に必要な協力をするよう努めなければならない。

(関係機関との連携)

第27条 児童相談所長は、児童の通学する学校及び必要に応じ警察、医療機関その他の関係機関と密接に連携して児童の支援に当たらなければならない。

(一時保護施設に備える帳簿)

第28条 一時保護施設は、入所している児童の処遇の状況を明らかにした帳簿を整備しなければならない。

(秘密保持等)

第29条 一時保護施設の職員は、正当な理由なく、業務上知り得た児童又はその家族の秘密を漏らしてはならない。

2 区長は、一時保護施設の職員であった者が、正当な理由なく、業務上知り得た児童又はその家族の秘密を漏らすことがないよう、必要な措置を講じなければならない。

(苦情への対応)

第30条 区長は、一時保護施設に入所している児童又はその保護者等からの苦情に迅速かつ適切に対応するために、窓口の設置その他の必要な措置を講じなければならない。

2 区長は、前項の必要な措置として、苦情の解決に当たって、当該施設の職員以外の者を関与させなければならない。

(委任)

第31条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行について必要な事項は、規則で定める。

(施行期日)

1 この条例は、令和7年4月1日から施行する。

(経過措置)

2 令和8年3月31日までの間は、第21条第3項の規定にかかわらず、一時保護施設は、法第12条の3第2項第6号に規定する児童福祉司であって、一時保護施設の職員の指導及び教育を行うために必要な知識及び経験を有する者として児童相談所長が適当と認めた者を指導教育担当職員として置くことができる。

荒川区一時保護施設の設備及び運営の基準に関する条例

令和7年3月18日 条例第3号

(令和7年4月1日施行)

体系情報
第10編 祉/第2章 児童福祉
沿革情報
令和7年3月18日 条例第3号