○荒川区認知症初期集中支援推進事業実施要綱
平成28年10月17日
(28荒福高第2091号)
(副区長決定)
(目的)
第1条 この要綱は、認知症になっても本人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域で暮らし続けるために、認知症の者及びその家族に早期に関わる荒川区認知症初期集中支援チーム(以下「支援チーム」という。)を配置し、早期診断及び早期対応に向けた支援体制を構築することを目的とした、荒川区認知症初期集中支援推進事業の実施に際して、必要な事項を定める。
(実施体制)
第3条 支援チームは、区又は区が委託した実施団体が運営する認知症疾患医療センターを含む病院、診療所等に設置することとし、認知症にかかる専門的な知識及び技能を有する医師の指導の下、複数の専門職が家族の訴え等により認知症の疑いがある者又は認知症の者(以下「訪問支援対象者」という。)及びその家族を訪問し、観察及び評価、家族支援等の初期の支援を包括的、集中的に実施し、自立生活のサポートを行うものとする。
2 支援チームは、地域包括支援センター職員、区職員、かかりつけ医、認知症サポート医、認知症にかかる専門的な知識及び技能を有する医師、認知症疾患医療センター職員、介護事業者等との連携を常に意識し、情報が共有できる仕組を確保する。
(訪問支援対象者)
第4条 訪問支援対象者は、原則として、区内において在宅で生活する40歳以上の認知症の疑いがある者又は認知症の者であって、次の各号のいずれかに該当するものとする。
(1) 医療サービス、介護サービスを受けていない者、又は中断している者で以下のいずれかに該当するもの
ア 認知症疾患の臨床診断を受けていない者
イ 継続的な医療サービスを受けていない者
ウ 適切な介護サービスに結び付いていない者
エ 介護サービスが中断している者
(2) 医療サービス、介護サービスを受けているが、認知症の行動又は心理症状が顕著なため、対応に苦慮している者
(認知症初期集中支援チーム員の編成)
第5条 認知症初期集中支援チーム員(以下「チーム員」という。)は、専門職2人以上及び専門医1人の計3人以上で編成する。
(1) 保健師、看護師、作業療法士、歯科衛生士、精神保健福祉士、社会福祉士、介護福祉士等の医療保健福祉に関する国家資格を有する者
(2) 認知症ケア又は在宅ケアの実務又は相談業務等に3年以上携わった経験がある者
(3) 国が定める「認知症初期集中支援チーム員研修」(以下「チーム員研修」という。)を受講し、必要な知識及び技能を修得した者。ただし、区長が特に認めた場合は、チーム員研修を受講したチーム員が受講内容をチーム内で共有することをもって、受講に代えることができる。
3 第1項に掲げる専門医とは、日本老年精神医学会若しくは日本認知症学会の定める専門医又は認知症疾患の鑑別診断等の専門医療を主たる業務とした5年以上の臨床経験を有する医師のいずれかに該当し、かつ、認知症サポート医である医師をいう。
ただし、区長が特に認めた場合は、次の各号のいずれかに該当する医師も支援チームの専門医とすることができる。
(1) 日本老年精神医学会若しくは日本認知症学会の定める専門医又は認知症疾患の鑑別診断等の専門医療を主たる業務とした5年以上の臨床経験を有する医師であって、今後5年間で認知症サポート医研修を受講する予定のあるもの
(2) 認知症サポート医であって、認知症疾患の診断及び治療に5年以上従事した経験を有するもの(ただし認知症疾患医療センター等の専門医と連携を図っている場合に限る。)
(チーム員の役割)
第6条 チーム員のうち専門職は、訪問支援対象者に対し、認知症の包括的観察及び評価に基づく初期集中支援を行うために訪問活動等を行う。
2 チーム員のうち専門医は、他のチーム員をバックアップし、認知症に関して専門的見識から指導、助言等を行う。また、必要に応じて他のチーム員とともに訪問支援対象者を訪問し相談に対応する。
3 初回の訪問は、観察及び評価を行うことから、原則として医療系職員と介護系職員それぞれ1人以上を含む計2人以上のチーム員が行う。
(事業内容)
第7条 事業内容は、次の各号に定めるとおりとする。
(1) 支援チームに関する普及啓発
地域住民並びに関係機関又は団体に対し、支援チームの役割及び機能について広報活動並びに協力依頼を行う。
(2) 認知症初期集中支援の実施
ア 訪問支援対象者の把握
訪問支援対象者の把握については、支援チームが地域包括支援センター又は認知症疾患医療センターを通じ訪問支援対象者に関する情報を入手できるように連携体制を構築することとし、チーム員が直接訪問支援対象者に関する情報を知り得た場合においても、地域包括支援センターと情報共有を図るものとする。
イ 情報収集並びに観察及び評価
支援チームは、本人のほか家族等のあらかじめ協力の得られる者が同席できるよう調整を行い、本人の現病歴、既往歴、生活情報等に加え家族の状況等を情報収集するとともに、認知症の包括的観察及び評価を行う。
ウ 初回訪問時の支援
支援チームは、初回訪問時に、認知症の包括的観察及び評価、基本的な認知症に関する正しい情報の提供、専門的医療機関への受診又は介護保険サービスの利用の効果に関する説明並びに訪問支援対象者及びその家族の心理的サポート又は助言等を行う。
エ 専門医を含めたチーム員会議の開催
支援チームは、初回訪問後、訪問支援対象者ごとに、観察及び評価内容を総合的に確認し、支援方針、支援内容、支援頻度等を検討するため、専門医を含めたチーム員会議を行う。なお必要に応じて、訪問支援対象者のかかりつけ医、介護支援専門員、地域包括支援センター職員、区職員等の関係者の参加を依頼する。
オ 初期集中支援の実施
支援チームは、医療機関への受診が必要な場合の訪問支援対象者への動機付け及び継続的な医療サービスの利用に至るまでの支援、介護サービスの利用等の勧奨又は誘導、認知症の重症度に応じた助言、身体を整えるケア、生活環境等の改善等の支援を行う。
支援期間は、訪問支援対象者が医療サービス又は介護サービス等による安定的な支援に移行するまでの間とし、概ね最長で6か月間とする。
カ 初期集中支援実施中における情報共有
支援実施中において訪問支援対象者の情報を地域包括支援センター等の関係機関が把握した場合は、支援チーム及び認知症疾患医療センターに情報を提供する等、協力体制を構築し情報共有を図る。
キ 初期集中支援の終了と引き継ぎ後のモニタリング
初期集中支援の終了をチーム員会議が判断したときは、支援チームは、地域包括支援センター職員、担当介護支援専門員等とともに同行訪問を行う等の方法により、支援を円滑に引き継ぐこととする。
また、チーム員会議において、引き継ぎの2か月後に、サービスの利用状況等を評価し、必要性を判断の上、随時モニタリングを行う。
ク 記録等の保管
支援チームは、訪問支援対象者に関する情報、観察及び評価結果、初期集中支援の内容等を記録した書類を適切に管理、保管しなければならない。
(3) 認知症初期集中支援チーム検討委員会の設置等
ア 医療、保健又は福祉に携わる関係者等から構成される認知症初期集中支援チーム検討委員会(以下「検討委員会」という。)を設置し、支援チームの設置及び活動状況を検討するとともに、検討委員会が関係機関又は団体と一体的に本事業を推進していくための合意形成の場となるよう努める。
イ 支援チームと医療関係者との連携を図るため、認知症疾患医療センター又は医師会との事前協議並びに主治医(かかりつけ医)に対する連絡票等情報の共有化に向けたツールの作成及びそれを用いた地域の連携システムの構築を図る。
(報告及び調査)
第8条 区長は、本事業の全部又は一部を実施団体に委託する場合にあっては、適正かつ積極的な事業運営を確保するため、実施団体に対し、事業の実施状況に関する報告を徴取し、また必要に応じて当該報告に関する調査等を行うことができる。
(個人情報の保護)
第9条 チーム員は、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)の定めに従い、訪問支援対象者及びその家族の個人情報及びプライバシーの尊重、保護に万全を期すものとし、正当な理由がなくその業務に関して知り得た秘密及び個人情報を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。
(委任)
第10条 この要綱に定めるもののほか、この事業の実施に関し必要な事項は、福祉部長が別に定める。
附則
この要綱は、平成29年1月1日から施行する。ただし、第7条第3号の規定は、平成28年11月1日から施行する。