○荒川区文化財保護条例
昭和57年3月13日
条例第1号
目次
第1章 総則(第1条―第3条)
第2章 文化財の登録(第4条・第5条)
第3章 文化財の指定(第6条・第7条)
第4章 文化財の保護及び活用(第8条―第14条)
第5章 所有者等の権利義務(第15条―第22条)
第6章 文化財保護審議会(第23条―第30条)
第7章 雑則(第31条―第33条)
第8章 罰則(第34条―第37条)
付則
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、文化財保護法(昭和25年法律第214号。以下「法」という。)第182条第2項の規定に基づき、荒川区(以下「区」という。)の区域内に存する文化財について、その保存及び活用のため必要な措置を講じ、もって区民の文化的向上に資するとともに、郷土文化の振興と発展に貢献することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において「文化財」とは、次に掲げるものをいう。
(1) 建造物、絵画、彫刻、工芸品、書跡、典籍、古文書その他の有形の文化的所産で歴史上又は芸術上価値のあるもの(これらのものと一体をなしてその価値を形成している土地その他の物件を含む。)並びに考古資料及びその他の学術上価値のある歴史資料(以下「有形文化財」という。)
(2) 演劇、音楽、工芸技術その他の無形の文化的所産で歴史上又は芸術上価値のあるもの(以下「無形文化財」という。)
(3) 衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗慣習、民俗芸能又は民俗技術で生活の推移の理解のため欠くことのできないもの(以下「無形民俗文化財」という。)及びこれらに用いられる衣服、器具、家屋その他の物件で生活の推移の理解のため欠くことのできないもの(以下「有形民俗文化財」という。)
(4) 貝塚、古墳、城跡、旧宅その他の遺跡で区にとって歴史上又は学術上価値の高いもの、庭園、橋梁その他の名勝地で芸術上又は観賞上価値の高いもの並びに動物(生息地、繁殖地及び渡来地を含む。)、植物(自生地を含む。)及び地質鉱物(特異な自然の現象の生じている土地を含む。)で学術上価値の高いもの(以下「記念物」という。)
(区等の責務)
第3条 区は、文化財が郷土の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであり、かつ、将来の文化の向上発展の基礎をなすものであることを深く認識し、文化財の保存及び活用が適切に行われるよう努めなければならない。
2 区民は、文化財の保護に努めるとともに、区がこの条例の目的を達成するために行う施策に誠実に協力しなければならない。
3 文化財の所有者その他の関係者は、文化財が郷土にとって貴重な財産であることを自覚し、これを公共のために大切に保存するとともに、できるだけこれを公開する等その文化的活用に努めなければならない。
4 荒川区教育委員会(以下「教育委員会」という。)は、教育活動及び広報活動を通じて、文化財保護に関する知識の普及及び意識の高揚に努めるとともに、文化財の研究及び保護を行う自主的活動並びに地域文化活動の育成に努めなければならない。
5 教育委員会は、この条例の執行に当たっては、関係者の所有権その他の財産権を尊重するとともに、文化財の保護と他の公益との調整に留意しなければならない。
第2章 文化財の登録
(登録)
第4条 教育委員会は、区の区域内に存する文化財のうち保存の必要があると認めたものを、次の各号の荒川区登録文化財(以下「区登録文化財」という。)として荒川区文化財登録台帳(以下「文化財登録台帳」という。)に登録することができる。
(1) 荒川区登録有形文化財(以下「区登録有形文化財」という。)
(2) 荒川区登録無形文化財(以下「区登録無形文化財」という。)
(3) 荒川区登録有形民俗文化財(以下「区登録有形民俗文化財」という。)
(4) 荒川区登録無形民俗文化財(以下「区登録無形民俗文化財」という。)
(5) 荒川区登録記念物(以下「区登録記念物」という。)
2 有形文化財、有形民俗文化財及び記念物(以下「有形文化財等」という。)を登録するに当たっては、教育委員会は、あらかじめ当該文化財の所有者及び権原に基づく占有者の同意を得なければならない。ただし、所有者又は権原に基づく占有者が判明しないときは、この限りでない。
3 無形文化財及び無形民俗文化財(以下「無形文化財等」という。)を登録するに当たっては、教育委員会は、当該文化財の保持者又は保持団体(無形文化財等を保持する者が主たる構成員となっている団体で代表者の定めのあるものをいう。以下同じ。)(以下「保持者等」という。)の同意を得て認定しなければならない。ただし、無形民俗文化財の保持者等が判明しないときは、この限りでない。
4 第1項の規定により登録するときは、教育委員会がその旨を告示するとともに、有形文化財等にあっては当該文化財の所有者及び権原に基づく占有者に、無形文化財等にあっては当該文化財の保持者等として認定したもの(保持団体にあっては、その代表者)に通知するものとする。ただし、所有者又は権原に基づく占有者の判明しないときは、告示をもって足りるものとする。
6 教育委員会は、無形文化財等の登録をした後においても、当該無形文化財等の保持者等として認定するに足りるものがあると認めるときは、そのものを保持者等として追加認定することができる。
(登録の解除)
第5条 教育委員会は、区登録文化財が区登録文化財としての価値を失った場合その他特別の事由のあるときは、その登録を解除することができる。
2 教育委員会は、区登録無形文化財及び区登録無形民俗文化財(以下「区登録無形文化財等」という。)の保持者が心身の故障により保持者として適当でなくなったと認められる場合、保持団体がその構成員の異動のため保持団体として適当でなくなったと認められる場合その他特別の事由のあるときは、その認定を解除することができる。
4 区登録無形文化財等の保持者が死亡したとき又はその保持団体が解散したとき(消滅したときを含む。以下同じ。)は、当該保持者等の認定は解除されたものとし、区登録無形文化財等の保持者のすべてが死亡したとき又はその保持団体のすべてが解散したときは、当該文化財の登録は解除されたものとする。この場合においては、教育委員会は、その旨を告示しなければならない。
第3章 文化財の指定
(指定)
第6条 教育委員会は、区登録文化財(法及び東京都文化財保護条例(昭和51年東京都条例第25号。以下「都条例」という。)の規定による指定を受けた文化財を除く。)のうち区にとって重要なものを次の各号の荒川区指定文化財(以下「区指定文化財」という。)に指定することができる。
(1) 荒川区指定有形文化財(以下「区指定有形文化財」という。)
(2) 荒川区指定無形文化財(以下「区指定無形文化財」という。)
(3) 荒川区指定有形民俗文化財(以下「区指定有形民俗文化財」という。)
(4) 荒川区指定無形民俗文化財(以下「区指定無形民俗文化財」という。)
(5) 荒川区指定記念物(以下「区指定記念物」という。)
(指定の解除)
第7条 区指定文化財の指定の解除については、第5条の規定を準用する。
2 区登録文化財の登録が解除されたときは、区指定文化財の指定は解除されたものとする。
3 区指定文化財が法又は都条例の規定により指定を受けたときは、当該区指定文化財の指定は解除されたものとする。
第4章 文化財の保護及び活用
(保存の措置)
第8条 教育委員会は、区登録無形文化財等の保存のため必要があると認めるときは、自ら記録を作成し、その他保存のため適当な措置を執ることができる。
(管理又は修理等に関する勧告)
第9条 教育委員会は、区指定有形文化財、区指定有形民俗文化財及び区指定記念物(以下「区指定有形文化財等」という。)の管理が適当でないため当該文化財が滅失し、き損し、又は盗み取られるおそれがあると認めるときは、その所有者に対して、管理方法の改善、保存施設の設置その他管理に関し必要な措置を勧告することができる。
2 教育委員会は、区指定有形文化財等がき損している場合において、その保存のため必要があると認めるときは、その所有者に対して、その修理について必要な勧告をすることができる。
3 教育委員会は、区指定無形文化財等の保持者等その他その保存に当たることを適当と認めるものに対して、その保存のため必要な助言又は勧告をすることができる。
(奨励金の交付)
第10条 区は、文化財の保護を奨励するため、区登録文化財の所有者、保持者等及びその他の伝統的地域文化の保存に努める者若しくは団体で適当と認めるものに対して、予算の範囲内で奨励金を交付することができる。
(補助金の交付等)
第11条 区は、区指定有形文化財等の所有者に対して、管理又は修理のため特に経費が必要と認められる場合その他特別の事情がある場合には、予算の範囲内で補助金を交付することができる。
2 区は、区指定無形文化財等の保持者等その他その保存に当たることを適当と認めるものに対して、その保存に要する経費の一部に充てさせるため予算の範囲内で補助金を交付することができる。
3 前2項の規定により補助金を交付する場合には、教育委員会は、その補助の条件として管理若しくは修理又は保存に関し必要な事項を指示するとともに、必要があると認めるときは、当該管理若しくは修理又は保存について指揮監督することができる。
(1) 前条第3項の補助金の条件に達反したとき。
(2) 補助金の交付を受けた目的以外の目的に補助金を使用したとき。
(3) 前各号のほか、管理又は修理に関し法令に違反したとき。
(修理等に関する費用負担)
第13条 第9条の規定による勧告に基づいて行う修理その他の措置に要する費用の全部又は一部は、予算の範囲内で区の負担とすることができる。
(公開)
第14条 教育委員会は、区登録有形文化財又は区登録有形民俗文化財の所有者に対して、教育委員会の行う公開の用に供するため、6か月以内の期間を限って、当該文化財を出品することを勧告することができる。
2 教育委員会は、区登録有形文化財、区登録有形民俗文化財及び区登録記念物(以下「区登録有形文化財等」という。)の所有者及び区登録無形文化財等の保持者等に対して、当該文化財の公開を勧告することができる。
3 教育委員会は、区登録無形文化財等の記録の所有者に対して、その記録の公開を勧告することができる。
6 教育委員会は、第1項の規定により文化財が出品されたときは、その職員のうちから当該文化財の管理の責に任ずべき者を定めなければならない。
第5章 所有者等の権利義務
2 区登録有形文化財等の所有者は、特別の事情があるときは専ら自己に代わり当該文化財の管理の責に任ずべき者(以下「管理責任者」という。)を選任することができる。
3 管理責任者には、第1項の規定を準用する。
(現状変更等の許可等)
第16条 区指定有形文化財及び区指定記念物に関し、その現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、教育委員会の許可を受けなければならない。ただし、現状の変更については文化財の現状を維持するため教育委員会規則で定める場合又は非常災害のために必要な応急措置を執る場合、保存に影響を及ぼす行為については影響の軽微である場合は、この限りでない。
2 教育委員会は、前項の許可を与える場合において、保護上必要があると認めるときは、許可に条件を付すことができる。
2 教育委員会は、前項の届出に係る修理に関し保護上必要があると認めるときは、技術的な指導及び助言をすることができる。
(現状変更等の届出)
第18条 区登録有形文化財等(区指定有形文化財及び区指定記念物を除く。)に関し、その現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、あらかじめその旨を教育委員会に届け出なければならない。ただし、教育委員会規則で定める場合は、この限りでない。
2 教育委員会は、保護上必要があると認めるときは、前項の届出に係る現状の変更又は保存に影響を及ぼす行為に関し必要な事項を指示することができる。
(1) 区登録有形文化財等の所有者が氏名若しくは名称又は住所を変更したとき 所有者
(2) 区登録有形文化財等の所有者が変更したとき 新所有者
(3) 区登録有形文化財等の管理責任者を選任し、又は解任したとき 所有者
(4) 区登録有形文化財等の管理責任者が氏名若しくは名称又は住所を変更したとき 管理責任者
(5) 区登録有形文化財等が滅失し、き損し、又は亡失したとき 所有者(管理責任者がある場合は管理責任者)
(6) 区登録有形文化財及び区登録有形民俗文化財の所在の場所を変更しようとするとき 所有者(管理責任者がある場合は管理責任者)
(7) 区登録記念物の登録地域内の土地について、その土地の所在、地番、地目又は地積に異動があったとき 所有者(管理責任者がある場合は管理責任者)
(1) 区登録無形文化財等の保持者が氏名、芸名若しくは雅号又は住所を変更したとき 保持者
(2) 区登録無形文化財等の保持団体が名称若しくは事務所の所在地を変更し、又はその構成員に異動を生じたとき 保持団体の代表者
(3) 区登録無形文化財等の保持団体の代表者に変更があったとき 保持団体の新代表者
(4) 区登録無形文化財等の保持者に当該区登録無形文化財等の保存に影響を及ぼす心身の故障が生じたとき 保持者又は保持者の推定相続人
(5) 区登録無形文化財等の保持者が死亡したとき 保持者の相続人
(6) 区登録無形文化財等の保持団体が解散したとき 保持団体の代表者であった者
2 補助又は費用負担に係る管理又は修理に関し必要な措置が行われた後、当該区指定有形文化財等を区に譲り渡した場合その他特別の事情がある場合には、区は、前項の規定により納付すべき金額の全部又は一部の納付を免除することができる。
(所有者変更に伴う権利義務の承継)
第22条 区登録有形文化財等の所有者が変更したときは、新所有者は、当該文化財に関しこの条例に基づいてする教育委員会の勧告、指示その他の処分による旧所有者の権利義務を承継する。
第6章 文化財保護審議会
(設置)
第23条 教育委員会に、荒川区文化財保護審議会(以下「審議会」という。)を置く。
(所掌事項)
第24条 審議会は、教育委員会の諮問に応じ、文化財の保護及び文化財保護活動の育成に関する重要事項を調査審議し、これらの事項について教育委員会に建議する。
(審議会への諮問)
第25条 教育委員会は、次に掲げる事項については、あらかじめ審議会に諮問しなければならない。
(1) 区登録文化財としての登録及びその解除
(2) 区指定文化財としての指定及びその解除
(3) 区登録無形文化財等の保持者等としての認定、追加認定及びその解除
(4) 前各号に掲げるもののほか、教育委員会が必要と認める事項
(組織)
第26条 審議会は、文化財に関し広くかつ高い識見を有する者のうちから、教育委員会が委嘱する委員10人以内をもって組織する。
2 特別の事項を調査審議するため必要があるときは、審議会に臨時委員を置くことができる。
(委員の任期)
第27条 委員の任期は、2年とし、再任されることを妨げない。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 臨時委員は、当該特別の事項に関する調査審議が終了したときは、解任されるものとする。
(会長及び副会長)
第28条 審議会に会長及び副会長各1人を置き、委員の互選により定める。
2 会長は、会務を総理し、審議会を代表する。
3 副会長は、会長を補佐し、会長に事故があるときは、その職務を代理する。
(会議)
第29条 審議会は、会長が招集する。
2 審議会は、委員の過半数の出席がなければ会議を開くことができない。
3 審議会の議事は、出席した委員の過半数をもって決し、可否同数のときは、会長の決するところによる。
(部会)
第30条 専門的事項を調査研究するため、審議会に部会を置くことができる。
第7章 雑則
(標識等の設置)
第31条 教育委員会は、区登録有形文化財等のうち区民の観覧のため必要があると認めるものについては、当該文化財の所有者又は権原に基づく占有者の同意を得て、標識又は案内板を設置し、これを当該文化財の所有者、権原に基づく占有者又は管理責任者に管理させることができる。
(文化財保護推進員)
第32条 文化財の所在及び保存状況を調査するとともに、文化財保護の指導、助言及び普及を行うため、教育委員会に文化財保護推進員を置くことができる。
2 文化財保護推進員は、非常勤とする。
(委任)
第33条 この条例の施行に関し必要な事項は、教育委員会規則で定める。
第8章 罰則
(刑罰)
第34条 区指定有形文化財を損壊し、き損し、又は隠匿した者は、5万円以下の罰金又は科料に処する。
第35条 区指定記念物の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしてこれを滅失し、き損し、又は衰亡するに至らしめた者は、5万円以下の罰金又は科料に処する。
第36条 第16条の規定に違反して教育委員会の許可を受けず、若しくはその許可の条件に従わないで、区指定有形文化財若しくは区指定記念物の現状を変更し、若しくはその保存に影響を及ぼす行為をし、又は教育委員会の現状の変更若しくは保存に影響を及ぼす行為の停止の命令に従わなかった者は、3万円以下の罰金又は科料に処する。
付則
この条例は、教育委員会規則で定める日から施行する。
(昭和57年教委規則第4号で昭和57年10月1日から施行)
附則(平成17年3月18日条例第14号)
この条例は、平成17年4月1日から施行する。