○東京都荒川区事案決定規程の制定について(依命通達)
昭和58年5月25日
58荒総総発第101号
昭和58年5月16日 荒川区訓令甲第5号をもつて東京都荒川区事案決定規程を新たに制定し、同年6月1日から施行することとした。
この規程は、従来東京都荒川区役所処務規程(昭和40年荒川区訓令甲第1号)に規定されていた区長の権限に属する事務事業に関する事案の決定及びその方式について、その適正化と能率化を図る趣旨のもとに、従来のりん議方式を改善した決定書方式を採用するとともに、事務執行の実態等を考慮しながら、決定権限の合理的配分と決定手続について定めたものである。
なお、この規程の制定に伴い、東京都荒川区役所処務規程等も一部改正し、規定を整備することとした。
ついては、貴職においては下記事項に留意するとともに、十分所属職員に周知徹底を図り、その運営に当たつては遺憾のないよう配慮されたい。
この旨命によつて通達する。
記
第1目的(第1条)
この規程は、区長の権限に属する事務に関する事案の決定権の合理的配分を図るとともに、決定手続の整備を図ることにより、事務執行における権限と責任の所在を明確にし、事案の決定の適正化に資することを目的とするものであること。
第2 事案決定の原則(第3条)
事案の決定は、区長又は助役、部長若しくは課長が、その結果の重大性に応じて行う旨の原則を定めたものであること。
第3 決定対象事案(第4条)
区長以下課長に至るまでの決定の対象となる事案は、別表に例示するとおりであること。
なお、各決定権者の決定対象事案は、決定の結果の重大性に応じて配分したものであるが、その基準はおおむね次のとおりであること。
1 区長決定事案
(1) 全般的方針を決定する事案
政治的・政策的事案
(2) 区の代表者として執行すべき事案
2 助役決定事案
(1) 区長決定事案に準ずる事案
(2) 部門間の調整を要する事案
3 部長決定事案
(1) 部門的方針を決定する事案
(2) 事務・事業の実施に係る事案のうち重要な事案
4 課長決定事案
(1) 事務・事業の実施に係る事案
第4 関連事案の決定(第5条)
事案の決定は、第3条に規定する事案決定の原則に基づき、各事案ごとに決定権者が単独に行うものであること。しかしながら、決定権者を異にする2以上の事案については、常にその決定権者が各別に決定の手続をとるべきものとすれば、事務手続が煩雑になり実務的でないので、当該2以上の事案を1事案として決定すべき場合を定めたものであること。
また、「密接に関連するため、当該各事案を各別に決定することが不適当である」とは、例えば、一つの行政処分とそれに関する所要事項の通知等を同一時期に行う場合等をいうものであること。
第5 事案の決定権の委譲(第6条)
事案の決定権の配分は、事案決定の原則に基づいて定められた別表によるが、具体的事案の内容及び事務量は様々であるので、事務執行をより合理的かつ実際的なものとするため、決定権を委譲できる場合として次の二つの場合を定めたものであること。
1 区長から助役へ委譲する場合(第6条第1項)
この場合は、文書により委譲するのが原則であるが、必要により口頭で行う場合もあること。
2 助役又は部長から当該事案を主管する部長又は課長に委譲する場合(第6条第2項)
この場合は、助役又は部長から当該事案を主管する部長又は課長へ文書により委譲する旨を通知すべきものであること。
なお、部長がこの措置をとつた場合には、その旨を文書で総務企画部長に通知すること。
事案の決定権者が不在の場合で、至急に決定を要するときの決定の方式としては、事案の決定権が委譲によるものか否かにより次の区別があること。
1 臨時代行(第7条)
第6条の規定により決定権の委譲された事案以外の事案については、助役又は当該事案を主管する部長、課長若しくは係長若しくは担当係長が臨時に事案の決定を行うことができるものとしたこと。
なお、この措置により事案を決定した場合には、当該決定に係る起案文書等を回付すること等により、必ず本来的に決定すべき者に報告することを要するものであること。
2 委譲した者による決定(第8条)
第6条の規定により決定権の委譲された事案については、委譲した者が事案の決定を行うこととしたこと。
第7 事案の決定の例外措置(第9条)
なお、理由の明示は、原則として起案文書に表示することとし、口頭で述べた場合は、その内容を記録した文書を起案文書に添付しておく必要があること。
第8 事案の決定への関与(第10条)
事案の決定は、決定権者が単独で行うものであるが、区長の権限に属する事務の組織的統一性を必要最小限度確保し、事務の適正な執行を図るため、決定に対する関与を認め、その種別と範囲を明確にしたものであること。したがつて、関与の範囲を不当に拡大すると責任の所在が不明確になるとともに事案の能率的決定を阻害することになるので、この点特に留意し、関与の範囲は限定的に解すべきものであること。
この趣旨から、事案決定前の単に供覧にとどまる意味での起案文書の回付は、極力さけ、事案決定後に行う第13条第4項の「決定後供覧」制度を活用するよう留意する必要があること。
第10条第2項の「事務に直接影響を与えるもの」とは、協議を行わなければ事務執行にそごをきたし、法令等に牴触し、又は予算に影響を与えることが予想される事案をいうものと解すべきものであること。
第10条第3項の「事務執行規程等により決定に対する関与を行うべき者」とは、具体的には当該事務執行規程等の解釈によつて定まるものであること。
決定に対する関与の種別は、審議、審査及び協議の3種類とし、それぞれの意義は次のとおりであること。
1 審議 主管の系列に属する者が、その職位との関連において、事案について調査、検討し、その事案に対する意見を決定権者に表明すること。
2 審査 主として法令の適用関係の適正化を図る目的で事案について調査、検討し、その事案に対する意見を決定権者に表明すること。
3 協議 決定権者又は審議を行う職位にある者と、審議を行う職位以外の職位にある者とが、それぞれ、その者の職位との関連において事案について意見の調整を図ること。
第9 事案の決定関与の臨時代行(第11条)
事案の決定の臨時代行の場合と同様に、決定関与についても臨時代行を行うことができる場合及びその手続を定めたものであること。
第10 補助的決定関与(第12条)
事案の決定関与者は、自己の関与を適正に行うため、部下に補助的に決定関与を行わせることができるものとしたこと。したがつて、補助者の指定は、事案の決定関与者が関与を適正に行うに必要な最小限度の範囲に限つて行うべきものであること。
第11 事案の決定方式等(第13条)
事案の決定は、当該事案に係る決定案を文書で表示し、その内容を確認のうえ行うことを原則としたこと。ただし、機密若しくは緊急を要する事案又はきわめて軽易な事案については、起案文書によらず決定できるものとしたこと。この場合のきわめて軽易な事案とは、電話で照会のあつた事項に対する回答、事務連絡、会議への出席者の決定等で、記録に留めることを要しないものであること。
なお、機密又は緊急を要する事案については、決定後に決定手続に準じて文書を作成するものとしたこと。
2 起案(第13条第2項)
決定案の作成は、決定権者が自ら行う場合を除き、決定権者の指揮監督する職員のうちから起案者を指定し、その者に必要な指示を与えて行わせるものとしたこと。この指定及び指示は、事前に包括的になされても支障はないこと。
3 決定後の通知(第13条第4項)
事案の決定は、その執行については命令としての意味を有するもので、事案が決定された場合は、決定済みの起案文書の供覧等により決定内容を関係者(主として決定内容の執行に当たる者)に通知することを義務づけたものであること。
1 文書回付方式(第14条)
決定関与は、起案文書の回付によることを原則としたこと。この方式による場合、次の点に注意する必要があること。
(1) 協議に応ずることができないときは、決定関与者はその理由を明示すること。
(2) 協議の結果決定案の内容を変更するときは、その変更の経過及び理由が起案文書上わかるようにしておくこと。
2 会議方式(第15条)
決定権者が文書回付方式による決定関与を不適当と認めた場合は、会議方式により決定関与を行わせることができるものとしたこと。その運用については、次の点に注意する必要があること。
(1) 会議が決定関与のためのものであることを会議開催に当たつて明示すること。
(2) 決定案は文書にし、検討期間を考慮して事前配布しておくこと。
(3) 会議には、決定関与者として正式の資格を有する者が出席し得るよう配慮すること。
(4) 会議は、事案の決定関与者全員を一度に招集して行うことを原則とするが、必要に応じて分割開催も可能であること。