荒川ゆうネットアーカイブ
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トップページ > 特集 > 花と緑のリレー 区民ボランティアの輪 第5回 藤の大滝
荒川ゆうネットは、平成16年から22年までに開設されていたサイトです。
内容は、掲載当時のものとなります。
花と緑のリレー 区民ボランティアの輪
藤の名所は数々あれど、個人宅の外階段に巻き付いた藤の木が観光名所になっているのは、
荒川区のみではないでしょうか。
左官業を営んでいた井上文治さんは35年前に自宅兼事務所ビルの新築祝いとして
職人仲間から60センチほどの藤の苗をもらいました。
玄関先に植えかえ、大切に育てた結果、現在はビルの3階まで届く12メートルほどの大木に育ち、
町の皆さんに愛されています。
第4回 荒川さくらそう会 INTERVIEW 大切に育てていかなくてはいけないと襟を正す思いです 荒川さくらそう会 宮本米吉さん
荒川さくらそう会 宮本米吉さん

DATA
荒川さくらそう会

東日暮里3−37−6

見頃:4月下旬から5月上旬

お問い合わせ先:
  産業経済部 観光振興課
  電話番号: 03-3802-3111(内線461)
  ファクス番号: 03-3803-2333

藤の名所は個人宅

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満開の「藤の大滝」溜息が出るほどの美しさ(平成元年頃撮影)
三河島駅から徒歩3分、井上さん宅に近づいていくと、どこからともなく甘い香りが漂ってきます。香りに誘われ、さらに歩み続けると、ふいに大きな藤の木が視界に現れました。
「藤の大滝」の名のとおり、たわわに開花した淡紫色の藤の花房は流れ落ちる滝のように美しく、さながら娘道成寺の舞台のようです。
通常、園芸種である藤は藤棚(高さ2.4mほど)にツルを這わせて垂れ下がる花を観賞するのですが「藤の大滝」は井上さん宅の外階段にツルを這わせ、上へ上へと成長しました。
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この時期を楽しみにしている人も多い
このように階段に仕立てている事例は珍しいとのことで、開花の時期には、都内はもとより遠方からも多くの方が鑑賞に来ます。
井上さんは、藤の花を楽しみにしてくださる方のためにと、一年を通して手入れに余念がありません。
ツルの剪定、誘引、施肥、花柄摘み、落葉の清掃など仕事は多岐に渡るうえ、これほどの巨木の手入れは大仕事です。

伐採を逃れて

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左官事務所が町のオアシスとして生まれ変わった
長年大切に育ててきましたが、78歳のご高齢であることや、体調不安、家族への負担もあり、成長し続ける藤の手入れを行うことに限界を感じていた井上さんは、将来のことを考え、昨年の開花を最後にビルの2階までの高さに伐採をする決意をしていました。
伐採の足場にするパイプまで購入したものの、いままで我が子のように育てた藤を切らなければならないのかと断腸の思いだったそうです。
そんな井上さんの思いを知った町会の方々が「なんとか藤を残せないか」と荒川区に陳情しました。平成19年4月29日に、20年前から毎年開かれている町会主催の「藤見の宴」に西川区長を招待したところ、区長より「区の名物としてお手伝いをしたい」との好意的な発言がありました。
そもそも「藤の大滝」は1983年に荒川区の保護樹林に指定されていました。保護樹林の要綱では維持管理に関わる経費の半額が助成対象です。
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「藤の大滝」この宴で命名された
今回、この要綱が大幅に見直され「観光資源として認められること」「持ち主が高齢で維持が難しいこと」などを条件に経費の全額が助成対象になりました。
その適用第1号が「藤の大滝」です。これにより年間の維持管理を専門業者に全面委託することが可能になりました。
「町会の皆さんには大変お世話になりました。ありがたいことです。」と井上さん。
足場用に購入したパイプは町会に寄付し、さらに地域の皆さんへの恩返しとして、左官事務所として道具置き場にしていた一階を、地域のオアシスにすべく東日暮里三丁目本町会事務所として開放しました。

委託業者と二人三脚

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委託業者からの年間計画表
4月末日、委託業者による「藤の大滝」の維持管理に関わる年間計画案が、荒川区公園緑地課の立合のもと、井上さんと町会の方々に説明されました。
1.徒長枝剪定、つる誘引、花柄摘み
2.病害虫防除(アリ、アブラムシ、アメリカシロヒトリなど)
3.葉面散布
4.施肥
5.主幹整形、骨格剪定、消毒
6.道路清掃(落花清掃、落葉清掃)など
上記の年間工程表に、さらに井上さんからの要望が追記されました。
・落葉し枝ぶりが現れた時点での剪定を二日間
・春先の芽がではじめた時点での剪定を二日間
(作業前に具体的な剪定方法を打ちあわせしたい)
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大学ノートに几帳面に記された記録
「今年の手入れの成果が来年の開花に影響します。わたしの身体が動くうちは相談をしながら剪定を行ってほしいですね。その年によって気温や環境が違うので時期でキッパリ仕切るのではなく臨機応変の対応をお願いしたいと思います。」
井上さんは、管理を委託業者任せにせず「藤の大滝」を育ててきた自らの経験を活用してほしいと願っています。「ふじ日誌」と題された大学ノートは、委託業者の作業項目や覚え書きが綴られていました。

成長し続ける「藤の大滝」

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根元の土はほんのわずかしかない
藤が植わっている土はわずか半畳にも満たないスペースで、肥料をあげるにも限界があるのが実状です。藤の背の高さは12mを越えましたが、地中の根はどのようになっているのでしょうか。
昨年夏に井上さん宅の前で下水道工事があった折り、一部アスファルトを剥がす試掘をしてみたところ、藤の根が伸びているのが確認されました。
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種からか根からか近くの公園に増えた孫藤
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「藤の大滝」がデザインされている
一般に藤の樹齢は1000年以上あると云われることから「藤の大滝」はまだ若木といってもよいでしょう。
五月晴れ、満開の藤のもとに人々が集う光景が1000年後も続いていくかもしれません。
町のシンボルとして「藤の大滝」を見守っていきたいですね。





平成20年5月掲載記事
問い合わせ先 荒川区管理部情報システム課
電話:03-3802-3111(内線 2151)

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