荒川ゆうネットアーカイブ
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居酒屋で一杯!

居酒屋【遠太】
荒川区東日暮里1-31
TEL : 03-3891-1175
営業時間 : 17:00〜22:00(日祝定休)

荒川区内には酒好きを虜にする居酒屋が多く点在します。ビール、焼酎、燗酒にあう肴の旨さもちろん、ご主人や女将さんの人柄や店の雰囲気に惹かれ常連化した人もいるのでは?
東日暮里の「遠太」も底知れぬ魅力をもつ店のひとつです。富山県出身の先代が、文京区の白山にあった奉公先の酒問屋「遠太」からのれん分けして、大正末期にこの地で同名の酒屋を開業しました。戦後は料理屋「遠太」として再スタート、時代の盛衰を経て今にいたります。
店の変遷を聞きながら、昭和に思いを馳せ酒を傾けるのも楽しいひととき。常連さんから親しみを込めて「お母さん」と呼ばれる女将さんによもやま話を聞いてきました。

女将さんがここに嫁いできたのはいつですか?

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「お母さん」に会いたくて通う人も

私は栃木県の呉服屋の娘で25歳まで好き勝手に過ごしていたの。親代わりの長兄が「もういい加減に嫁ぎなさい」と、正庭通りで商売をしていた同郷人の紹介で主人とお見合いしました。戦後からこの周辺は栃木県出身者が多く住んだんですね。

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小あがりでくつろぐも良し

11月に私の実家でお見合いをして、12月に仮結納、翌年の1月29日に結婚でしょ、数回しか会わないでお互い一緒になるなんて今の人には考えられない世界ですよ。

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年季が入った店内も魅力のうち

高度成長期の波に呼応するように、昭和33年に嫁いできた年から三年間はお正月しか休めない忙しさでした。当時の「遠太」は、主人と板前の2名が腕をふるい、日本舞踊を踊る芸者3名、三味線のお姉さん2名、酌婦を4〜5名、手伝いの女の子を2名を抱え、そのうち住み込みが3〜4人という大層な大所帯でした。舅に姑、小姑までいて賑やかでしたね。えらいところに嫁いできたなぁと思ったものです。

昔の店の様子を聞かせてください。

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広い厨房が当時を偲ばせる

一階が調理場で、二階が七畳半、六畳、八畳、十畳、七畳のお座敷です。県人会や披露宴などの利用もあって80人規模の宴会もありました。その時は唐紙をすべて取り払って、廊下にまで畳を引いて、柱と柱の間にお膳を並べて対応しました。日本家屋というのは、入る人数によっていかようにも部屋を仕切れるのが便利なところです。当時のお得意さんは日暮里という土地柄もあって製糸原料会社や、さいらく屋※ 鉄鋼会社などでした。商談以外にも新年会、忘年会など大勢でお見えでした。
私の子どもは三味線とお座敷小唄が子守歌代わりでしたね(笑)。

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二階座敷へと続く階段

今でこそ正庭通りは閑静ですが、昭和36年に地下鉄日比谷線の三ノ輪駅が出来るまでは、三河島の方から浅草に続くメイン通りでした。酉の市は鷲神社へ向かう人の賑わいで混雑するくらい。うちの店で一杯ひっかけてから神社に向う人あり、かっこめを担いで一杯呑んで帰る人あり、年末の風物詩で楽しかったですよ。

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内装は岩崎邸を手がけた職人が携わった

キャバレーが全盛期になってくると、お座敷で遊ぶ形態もだんだんと過去のものになり、専属の芸者を抱えるのも難しく入谷の紹介所から時間給で派遣してもらった時代もあいます。あの頃の華やかさは今思えば夢のようでしたね。

現在のスタイルになったのは何故ですか?

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安くて美味しいお袋の味

優しかった舅としっかりものの姑を見送り、子供たちも次第に手を離れ、だんだんと商売を小さくしていきました。
夫婦仲良く居酒屋「遠太」として営んできましたが、主人が亡くなってからは何をする気も起こらず、仕事をたたむつもりで半分まで手続きが済んでいたんですよ。

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遠太の独特ハイボール

それが毎日のように「ここが無くなったら何処に飲みにいくんだよ」「このまま続けてくれよ」って常連さんが訪ねてきてくれてね。
私の手料理で良かったらというので何となく続けて今に至ります(笑)。でも私は料理の修業をしたわけではないし暖簾を出すのはおこがましいと、暖簾は中に入れたまま。それでも承知してくれるならどうぞお入りくださいという気持ちで商売をさせていただいています。

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営業中でも暖簾は出さない

今はお客さんとの話が楽しみ。常連さんとの話もつきないけど、何処で探したのか随分遠い所から来てくださる人もいます。でも私ひとりでやっているものですから、ご注文をお待たせしてしまうことも。そんな時は常連さんが手伝ってくれたりして、なんか面白い店になってきちゃいましたね(笑)。


 
平成22年4月掲載記事
問い合わせ先 荒川区管理部情報システム課
電話:03-3802-3111(内線 2151)

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