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荒川区は手作り電球だ!

日本だけでなく世界でも残り少なくなった手作り電球の会社が荒川区にあるのをご存知ですか。昭和29年、世界で初めて天然色撮影できる胃カメラが誕生しましたが、このカメラを作ったのが、今回紹介する細渕電球株式会社です。
以来、医療機器電球を中心に光学測定機器用の特殊電球など、さまざまな電球を研究開発、製造しています。培った技術力を活かし、他社が製造中止した電球の再生にも取り組んでいます。手作り電球にかける思いを、細渕電球株式会社の高橋建志さんにお話を伺いました。

フィラメントを取り付ける職人さん。

昭和29年に誕生した天然色撮影可能な胃カメラを伝える記事(東京新聞/昭和29年3月4日)

どのような電球をつくっていらっしゃるのですか。

大小さまざまな電球たち。高橋さんは電球を「うちの子」と呼ぶ。

電球というと「あかり」をイメージされる方が多いと思いますが、私どもは、「あかり」だけではなく、光の線(光線)、光の波(波長)、光の熱といった光の性質を、使いたい用途に合わせて利用する電球を作っています。
例えば、光線を利用したものには、検眼用の電球があります。
検眼は、直線性のあるものを目に当てて状況を見ます。それを可能にするのが、髪の毛の半分以下の光線なのです。そのような光線を発する電球を私どもで作っています。
光の波長を利用したものには、たばこの葉の水分測定器があります。
たばこは、葉に含まれる水分量で味の良し悪しが決まるといい、その水分を測定するのに、一定の波長の光を当てて、たばこの葉に含まれる水の反射率を見ます。たばこの場合、光を吸収する波長1094ナノを基準に選別します。同じ原理を用いる「血液分析器」では、吸収波長347ナノが基準になります。
「ナノ(nm:ナノメートル)=光の波長(光の色の違いを表す)の単位。太陽の光をプリズムをとおすと七色の虹が見えます。光の波長により屈折率が異なる原理を応用したもので、太陽の光がすべての色(光の波長)をもっていることが分かります。光は、すべての色が集まると白色になります。」
ここまでは、ちょっと難しい話になりましたが、光の熱を利用したものはぐっと庶民的です。お惣菜屋さんなどで食品を温めるのに使われます。家庭でも電球は使っていると熱くなりますよね。光の熱を利用して、「温める」専用に作ったのが総菜用の電球、というわけです。

すべて手作りということですが。

お話を伺った高橋さん。身につけているのは口腔外科の医師と共同開発した、国内初ソーラーパネル付き外科手術用ランプ。

うちの子たちは(電球)は、どれもオーダーメイド。医療用では「こういうものが欲しい」という要望から始まることが多いんですね。そのイメージから、研究し設計して作り上げます。
完成まですべて手作業です。量的なことでは、大手メーカーさんに比べたら実に少ない生産量ですが、ニーズを受けて日々研究開発に努めて、高品質のものを提供することで、生き残っています。電球というある意味で、ニッチ(隙間)な製品の、さらにニッチなところで生きている会社といえると思います。
そんな会社だからでしょうか、同業の仲間からも「うちでは作れないから、細渕、何とかならないか」と、仕事が舞い込むことがあります。惣菜屋さんの電球もそうでしたし、南アフリカの電信電話の交換器を作った時もそうでした。
仲間だけでなく、お客様からも「うちで使っているランプの製造元が、供給しなくなってしまった。助けてください!」という、切実な電話が入ることもしばしばあります。
同業他社が「作れない・作らない・作りたくない」仕事がうちに来ます。それが、うちのビジネスモデルであり、行動指針になっています。

年季の入った機械は人の気持ちに応えるかのよう。

ですから、うちに来るのは、どれも「しんどい」仕事です。楽な仕事なんてありません。社員から「こんなのできません!」という声も聞こえてこないわけではありませんが、そんな時は、「それは違うよ。しんどい仕事だからうちに来るんだよ。しんどくない仕事だったら、うちには来ないんだよ」って言うんです。高い精度が求められ手間暇がかかる仕事は、ひとつやり遂げたら、次に来るのは、さらにその上の難易度の仕事です。待つだけではなく、自らもそういう仕事をします。この道の「匠」でないと残っていけない道に絶えずチャレンジしています。

好評の「電球スクール」についてお聞かせください。

自分で作った電球に満足そうな子どもたち。

「電球スクール」は、自分で電球を作ろうというもので、春休み・夏休みに開催しています。参加した子ども達の中には、自分で作った電球を抱いて寝る子まで現れて、子ども達の心にも何かが届いているのかなと思っています。
スクールは、企業の社会的貢献のひとつでもありますが、見学に来た子ども達から「おじちゃんスゴイ!」と言われると社員も嬉しくなって、ついつい他の技も披露したり…と、職場の雰囲気が明るくなりました。社員のモチベーションが上がるという面でも、スクールをやってよかったと思っています。
スクールでは、私が「エジソン高橋」となってナビゲートしていますが、最初に、トーマス・エジソンの伝記を基にした紙芝居をします。

スクールに参加者からのメッセージが壁一面に貼られていました。

エジソンは、電球の発明者ですが、当時の研究者が「無理」と思っていた長時間点灯する電球を作り上げた人物です。彼は、電球を作るのに1万回以上失敗しました。周囲からは「1万回も失敗したんだ。時間の無駄だ、諦めたほうがいい」と言われました。でも、エジソンはこう言うんです。「1万回失敗したから、あと1000回、2000回失敗すれば成功できるんだよ。成功はもう目の前に来ているんだよ」。
これは、電球を作る会社として伝えたい子ども達へのメッセージ、「夢をもちなさい」というメッセージでもありますが、同時に、この紙芝居をしながらエジソン高橋自身が、自分自身を鼓舞しているとも言えますね。
私には、細渕電球として現代のシュバイツアーを育てるような大学病院をつくりたい、という大きな夢があります。そこでうちの職人さんの作る電球が使われ、世のため人のために役立つ。そこまでいきたい、というのが私のストーリーなので、エジソン高橋として夢を実現させたいと思っています。
「トーマス・エジソン:1847年アメリカ生まれ。電球をはじめ映写機、蓄音機など生涯に多くの発明をしたことにより「発明王」として知られる。1931(昭和6)没。」

職人さんを育てることが未来への「あかり」ですね。

一人前の職人になる第一条件は「根気」。

うちの電球は、どれもできあがるのに100年かかる「100年電球」です。電球が出来上がるまでの工程に携わる職人さんの職歴を足したら100年を越えるんです。フィラメントを取り付ける職人さんは10年選手、ガラスを焼く職人さんは30年選手、ガラス内を真空にする排気の職人さんは10年選手、口金を固定する職人さんは20年選手などです。そうした技でできているのがうちの電球であり、その技で細渕電球は成り立っています。

未来の細渕電球になくてはならない女性の力。

今、社内には65歳の定年を過ぎても、会社のためにと働いてくれている職人さんがいますが、彼ら電球作りのスペシャリストがいてくれるうちに、次世代の職人を育てたい。
そこで、来年(平成20年)60周年を迎えるにあたり、新体制発足に向けて、「細渕検定」を行っています。この検定は、職人さんだけでなく、事務の人達も含めて、30〜40年かかるような職人技を覚えてもらう部署に抜擢するために考え出したものです。遊び感覚ですが、中身は本気です。

社訓が会社を物語る。

今いる社員のみんなは、会社の実情をわかってくれている仲間です。彼らと一緒にこれからの時代を生き残っていきたい。これまでは、結婚や子育てて仕事を離れるということで女性には職人技を教えることがなかったのですが、仕事に対する熱意と根気という点では、女性はすごい力を秘めていると思います。彼女達にも技を教えて、細渕でなければ作れない、細渕だからこそ作れる電球を作り続けていきたいと思います。

細渕電球インテリア部発『エミール・ガレの照明スタンド』

贈り物にしても喜ばれそう。

アールヌーボー・ナンシー派の指導者「エミール・ガレ」。没後百年が過ぎた今でも、ガレの技法が受け継がれ、そうした作品は「ガレ・チップ」と呼ばれ支持されています。
手作りで技法的に優れているガレ・チップを細渕電球インテリア部が紹介しています。手作りだからこその味わいをぜひ堪能ください。

●細渕電球株式会社●
〒116-0013 東京都荒川区西日暮里1-27-12 TEL:03-3805-2181
次回「手作り電球スクール」は、2008年3月22日(土)の予定です。
お申し込みは、細渕電球株式会社ホームページのメールより受け付けています。
http://www.hosobuchi-lamp.co.jp/index.htm

 
平成19年10月掲載記事
問い合わせ先 荒川区管理部情報システム課
電話:03-3802-3111(内線 2151)

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